半導体用語集

低電界移動度

英語表記:low-field mobility

 半導体に電界Eを加えると、キャリア(電子または正孔)の速度は変化する。電界が小さい場合は、キャリア速度に対する電界のエネルギーの寄与は小さく、キャリアのフェルミエネルギーや、熱エネルギーからの寄与が大きい。この場合、電界の効果はキャリアの等方的な運動に対する電界方向への微小な変調として現われ、キャリアの平均速度〈V〉は電界に比例する。すなわち、〈V〉=µEがなりたつ。この比例関係はほとんどの半導体に対して10³V/cm以下の低電界で成立し、この比例定数µを低電界移動度と呼ぶ。単に移動度と呼ぶ場合にはこの低電界移動度を意味することが多い。移動度は、電荷素量をe、キャリアの有効質量をm*、緩和時間をτとすると、µ=eτ/m*と表わされる(キャリアとして電子を仮定した場合は、右辺に負号がつく)。また、オームの法則がなりたつ時には、電気伝導率σとσ=|e|µn(nはキャリア密度)の関係にある。移動度はキャリアの散乱機構と密接に関係しているので、移動度の大きさ、温度特性、キャリア密度依存性を調べることによって、キャリアの散乱現象を推定することができる。たとえば、音響フォノン散乱が支配的な場合、移動度の温度依存性は、温度をTとして、T^-3/2で与えられる。また、フォノン散乱の寄与が小さい低温の高移動度二次元電子ガス(2DEG)の場合、バックグラウンド不純物が散乱を支配する場合には、キャリア密度とともにスクリーニング効果が強くなりµが増大し、界面ラフネスが寄与する場合には、キャリア密度の増大につれµは滅少する傾向を示す。移動度を測定するには、定義式に従うとキャリアの平均速度(ドリフト速度)を測定する必要があるが、その測定は困難な場合が多い。そこで、ホール効果を利用する場合が多い。この場合、ホール効果からキャリア密度を求め、零磁場で測定した試料の導電率σからσ=|e|nµを利用してµを求めるのが一般的であり、ほとんどの場合こうして求めたµを移動度として議論して問題はない。ただし、このようにホール効果の測定からえられる移動度は、厳密には上記の定義式で表わされる移動度と異なり、前者をホール移動度、後者をドリフト移動度と区別して呼ぶこともある。

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