半導体用語集
飽和速度
英語表記:saturation speed
半導体に電界Eを加えると、キャリア(電子または正孔)の速度は電界からエネルギーをえて変化する。電界が小さい場合は、キャリアの平均速度(ドリフト速度)は電界に比例するが(「低電界移動度」の項参照)、電界が大きくなり、キャリアが電界からえるエネルギーが熱エネルギーにくらべて無視できなくなると、 ドリフト速度は電界に比例しなくなる。実際には電界を大きくするにつれ、ドリフト速度は比例関係からずれて一定値に漸近していく。この一定になった速度を飽和(ドリフト)速度と呼ぶ。105V/cm以上の高電界では、キャリアは主に光学フォノンによって散乱されるため、ドリフト速度は、光学フォノンのエネルギーで制限され、電界によらず一定値、すなわち飽和速度となる。多くの半導体で飽和速度は約107cm/sになる。一部のⅢ-V族化合物半導体では、中間の電界領域(103~105V/cm)でドリフト速度が電界の増加につれ逆に減少する特異な現象がみられる。これらの半導体では伝導帯下端であるΓ点の比較的近くに次の極点に当たるL点が存在するため、電子のエネルギーが増大するにつれ、L点にも電子が溜るようになる。L点の電子はΓ点にくらべ有効質量が大きく、結果的に大きな状態密度と低い移動度を持っため、L点に電子が分布するようになると、逆に平均のドリフト速度は低下することになる。このような半導体ではドリフト速度は電界とともに増加し、103~104V/cmの電界で最大値を取った後逆に減少して、最終的には飽和速度で一定になる振る舞いを示す(「ガン効果」の項参照)。
関連製品
「飽和速度」に関連する製品が存在しません。キーワード検索
フリーワードやカテゴリーを指定して検索できます
関連用語
関連特集
「飽和速度」に関連する特集が存在しません。
会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。