半導体用語集

ヒ化ガリウム

英語表記:Gallium Arsenide : GaAs

 ガリウム(Ga)とヒ素(As)からなる化合物で,ガリウムヒ素とも呼ばれており,最もよく用いられているⅢ-Ⅴ族化合物半導体の一つである。閃亜鉛鉱型の立方晶系に属する暗灰色の結晶で金属光沢がある。分子量は144.64,格子定数は0.5654nmである。融点は1,238℃で,室温での熱膨張係数は5.0×10⁻⁶/℃である。また,比誘電率は11.5で,電子親和力は4.07eVである。直接遷移型の半導体で0Kおよび室温での禁制帯幅はそれぞれ1.52eV,1.43eVである。電気的特性は結晶性や不純物によって変化するが,常温での電子移動度は,8,800cm²/V・sとSiの約6倍である。しかし,高電界でのキャリア飽和速度は6×10⁶cm/sとSiと同等である。また,正孔移動度も420cm²/V・sでSiとあまり変わらない。バルクの単結晶は液体封止チョクラルスキー(Liquid Encapsulated Czochralski)法⋆や水平ブリッジマン(Horizontal Bridgeman)法⁑によって作製され,最大で4インチのウェハが市販されている。また,比抵抗が10⁷Ω・cm以上の半絶縁性の結晶もえられており,先端デバイスを作製する場合には寄生容量の小さい基板として多く用いられている。GaAsは強電場で負抵抗を示すので,ガン効果⁂を利用した高周波発振素子(ガンダイオード)としても応用されている。また,直接遷移型の半導体であるので,赤外光の発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)の活性層に用いられている。さらに,高い電子移動度を利用した高速・高周波の単体のデバイスにも多用されている。

⋆ 液体封止チョクラルスキー法(LEC);ルツボにAsと金属Gaを入れ高圧容器内に収め,そのルツボをB₂O₃で覆い,さらにその外側から不活性ガスで加圧しAsが解離して逃げるのを防いだ状態で,ルツボをGaAsの融点以上(約1,250℃)に加熱しGaAs融液を作り,種となる結晶を融液中から回転し引き上げることで凝固させてGaAs結晶をえる。
⁑ 水平ブリッジマン法(HB);石英アンプル中の一端にAsを他端にGa金属を入れたボードをおいて真空に封じ,加熱しGaAs融液を作り,十分飽和させた後,炉を移動して融液の一端から凝固させてGaAs結晶をえる。
⁂ ガン効果;n形GaAs単結晶の棒状試料の両端に電極をつけて直流電圧を印加すると,半導体中の電界が約3×10⁵Vm⁻¹を超すと電流が数ギガHz(ギガは10⁹)の高い周波数で振動する。1963年アメリカIBMのGunnによって発見された。


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