半導体用語集

pn接合

英語表記:pn junction

 半導体中のキャリアの種類と密度は不純物によって制御できる。シリコン中のⅤ族原子(P,As,Sb)やⅢ-Ⅴ族化合物半導体のⅥ族元素(S,Te,Se)のように,価電子が1個多く伝導電子の供給源となる不純物をドナー(donor)という。ドナーを添加した半導体では,ドナーから励起される伝導電子により電子密度が増加してその比率で正孔密度が減少する。この場合の伝導電子を多数キャリアと呼び,正孔を少数キャリアと呼ぶ。伝導電子が多数キャリアである半導体をn型半導体という。すなわち,ドナーを添加した半導体は通常n型になる。n型半導体では,バンドギャップ中の伝導帯付近に不純物による準位(不純物準位)が存在する。フェルミ準位も,室温付近ではバンドギャップ中の伝導帯付近に存在する。逆に,シリコン中のⅢ族原子(B,Al,Ga,In)やⅢ-Ⅴ族化合物半導体のⅡ族元素(Zn)のように,価電子が1個少なく正孔の供給源となる不純物をアクセプタ(acceptor)という。アクセプタを添加した半導体では,通常は正孔が多数キャリアとなり,p型半導体と呼ばれる。この場合,バンドギャップ中の価電子帯付近に不純物準位が存在し,室温付近のフェルミ準位もバンドギャップ中の価電子帯付近に存在する。Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体にSiを不純物として添加した場合には,その添加条件により,Ⅲ族原子と置換すれはドナーとなり,Ⅴ族原子と置換すれはアクセプタになる。
 半導体でp型とn型の領域が接する境界をpn接合という。pn接合付近では,伝導電子はp型領域へ,また,正孔はn型領域へ拡散し,伝導電子と正孔は再結合して消滅する。したがって,pn接合付近で,p型領域では正孔密度が著しく減少しアクセプタイオンが残るために負に帯電する。一方,n型領域では伝導電子密度が著しく減少しドナーイオンが残るために正に帯電する。この空間電荷が存在する領域を空間電荷領域(または,キャリアが欠乏しているという意味で,空乏層(depletion layer))と呼ぶ。この空間電荷は,pn接合付近に電荷二重層を形成し,その電界のために電子と正孔に対するポテンシャル障壁(拡散電位(diffusion potential),または,内部電位(built-in potential))を生ずる。結果的に,pn接合付近の伝導帯と価電子帯は,p型領域とn型領域のフェルミ準位が一致するようにバンドベンディングが起こった状態になり,p型領域の伝導帯と価電子帯のエネルギーは高エネルギー方向へシフトする。真空準位(半導体の外部において電子の持つエネルギー)と伝導帯の底のエネルギー差を電子親和力と呼ぶ。電子親和力は半導体の種類による固有なエネルギーであるので,pn接合の伝導帯と価電子帯のバンドベンディングと同じ分だけ真空準位もベンディングを受ける。
 pn接合で,p型が正方向の外部電圧を印加することを順方向バイアス条件という。0電圧の時pn接合間に流れる電流は0で,順方向電流は順方向の電圧に対して指数関数的に急激に増加する。pn接合で,n型が正方向の外部電圧を印加することを逆方向バイアス条件という。逆方向電圧が十分大きいと,その時流れる逆方向電流はほば一定となり,飽和電流(saturation current)と呼ばれる。
 ヒ化ガリウム(GaAs)では,n型不純物の拡散が困難であり,pn接合を作るのが容易ではないため,マイクロ波用FETなどでは金属とGaAsとの接触(ショットキ接合)を使うことが多い。


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