半導体用語集

化学吸着

英語表記:chemisorption

 表面に吸着した原子や分子は,一般的に,物理吸着の後,熱や電子・光照射により活性化エネルギー以上のエネルギーをえて基板原子と化学結合を形成することがある。また,分子によっては,表面に近づくに従い,二つ以上の原子集団(分子基)に分かれ直接化学結合を形成する(解離吸着)。この,比較的表面から近い位置で比較的大きな吸着エネルギーで捕獲され表面に取り込まれる現象を化学吸着という。
 分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)による薄膜成長では,分子線の供給,直接散乱,分子線の熱適応,物理吸着,表面拡散,表面反応,化学吸着,反応残物質の脱離,表面からの再脱離などの素過程が関与して薄膜が形成される。一例として,ヒ化ガリウム(GaAs)のMBE成長を考える。ヒ素を原料としてクヌーセンセルを加熱すると,As₄分子が基板に供給される。一般に,Gaの付着係数はほとんど1で,As₄分子の付着係数は温度の関数であると同時に表面にGaが存在するかに依存する。基板温度が450~600Kの場合には,As₄分子の付着確率はGaが存在しない時に0で,Gaが存在する場合にはGaの量に比例して最大0.5まで増加する。すなわち,物理吸着したAs₄分子は,この温度では非常に短時間表面に滞在することができ,その間表面を拡散(移動)してもう一つのAs₄分子と出会う確率が生まれる。その時,Ga原子が隣接すると,2個のAs₄分子のうち,4個のAs原子がGa原子と反応して化学吸着が起こりGaAs薄膜が成長する。残りのAs₄分子1個は付着せずに気相に脱離する。
 基板温度が600~900Kの場合にも,As₄分子の化学吸着過程は同様であるが,この温度領域では,基板のAs原子がAs₂分子として表面から脱離するため,表面にAs欠陥ができAs原子の吸着場所が生ずる。そのため,物理吸着したAs₄分子がその場所で化学吸着をして基板に取り込まれることがある。したがって,As₄分子の付着確率はGaが表面に存在しない時にも有限の値を取りうる。
 GaAsを原料としてクヌーセンセルを加熱すると,As₂分子が基板に供給される。この場合も基本的には,As₂分子の付着係数は,Gaの入射強度と基板温度に依存して変化する。すなわち,基本的には,Gaが存在する時に化学吸着が可能で付着係数が0でなくなる。


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