半導体用語集
混晶半導体
英語表記:alloy semiconductor
2種類以上の元素が,分子レベルで均一に混じり合ったものを固溶体と呼ぶ。特に結晶の場合は,混晶と呼ばれることもある。たとえば,SiとGeは,いずれもダイヤモンド構造をとるが,SiとGeを混合したものは,ダイヤモンド構造の格子点にあるSiをGeでランダムに置換した混晶となる。また,化合物半導体においても,たとえばGaAsとAlAsとを混合すると,Ⅲ族の占める副格子(面心立方格子)のGaが,Alによりランダムに置換される。このような系を擬ニ元系と呼ぶ。SiとGeの場合,任意の混合比で固溶体となる全率固溶体であるが,混合前の結晶の熱力学的な特性が大きく異なる場合には,非混和域(miscibility gap)が存在する場合がある。Ⅲ-Ⅴ族半導体では,GaAsSbなどのⅤ族副格子の混晶系では,非混和域が存在する場合が多い。
応用上,混晶半導体を用いる大きなメリットは,混晶系の物性定数,たとえば,禁止帯幅や格子定数などは,混合組成を制御することにより出発原料の中間的な値であれば連続的に実現できることである。また,構成元素の数を増やすと制御できる自由度は増加し,(擬)三元系では,たとえば禁止帯幅と格子定数を独立に制御可能となる。良好な半導体へテロ接合を形成するには,接合する両者の格子定数を整合させて転位の発生を押える必要があるため,半導体レーザなどのへテロ接合デバイスでは,必要な禁止帯幅と格子整合を同時に実現するために擬三元系や擬四元系が用いられている。
混晶化による得失は,ランダムに原子が置換され,格子の周期性が乱されることからも生じる。たとえば,その周期性の乱れのため,キャリアやフォノンが散乱され,キャリアの移動度や熱伝導率が低下する。デバイス特性にただちに影響が現われるかどうかは別にして混晶散乱のため混晶内のキャリアの低電界移動度は減少する。また,特に混合した原子の原子量の差が大きい場合は,熱伝導率が顕著に減少する。半導体レーザなどにおいて活性層の冷却を行う場合,混晶層が介在すると大きな熱抵抗となり,冷却効率が悪化する。一方,熱電半導体を用いた発電や冷却では,フォノンの運ぶ熱伝導は,エネルギー変換に関係しない無駄なエネルギーの流れとなるため,変換効率を低下させる。このため,格子の熱伝導率をいかに下げるかが課題となり,混晶化による熱伝導率の低減によって効率の向上が実現される。
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