半導体用語集
Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体
英語表記:three-five compound semiconductor
元素周期律表のⅢb族の元素(Al,Ga,Inなど)とⅤb族の元素(N,P,As,Sbなど)の化合物において,原子数量比が1:1の物質である。GaAs,AlAs,InAs,InP,GaP,GaSb,GaN,InNなどの二元化合物半導体の他に,これらを2種類以上組み合わせることでえられるAlGaAs,InGaAs,InAsP,InGaNなどの三元混晶と呼ばれる化合物半導体や,InGaAsPなどの四元混晶半導体がある。これらの大部分は閃亜鉛鉱型の立方晶系に属する結晶で,Ⅳb族元素のSiやGeなどのダイヤモンド型の結晶構造に対応するが,Ⅴ族が窒素の場合は六方晶系ウルツ鉱型の構造をとる。電子構造はSi,GeなどのⅣb族半導体と同様に半導体的性質を示すが,SiやGeにくらべ電子移動度が大きいという特徴を有する。また, GaAsに代表されるように直接遷移型バンド構造を持つ結晶が多い。さらに三元・四元混晶では,構成される二元化合物半導体の構成比を変えることで格子定数,禁制帯幅,屈折率,有効質量などの物性定数を連続的に変化することが可能であるので,デバイス構造を設計する場合,材料面での自由度が大きく広がる。一方,今日では結晶成長などの半導体プロセス技術の進展により,種類の異なるⅢ-Ⅴ族化合物半導体の薄膜を原子1~2段の厚さの精度で積み重ねたへテロ構造を作製することが可能で,これらプロセス技術を利用して,格子定数を基板に合わせながら禁制帯幅や屈折率を変化したへテロ接合,量子井戸構造⋆や超格子構造⁑などの精密な作製が行われている。このように,Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体は半導体レーザ⁂や高電子移動度トランジスタ(HEMT)†などの先端デバイス材料として,現在のエレクトロニクスを支えているものである。
⋆ 量子井戸構造;一つの方向にキャリアが閉じ込められている人工的な構造である。いい換えると,キャリアは一つの次元については波動性を示すが,他の二つの次元については自由電子として振る舞う。
⁑ 超格子構造;2種類の半導体を約10nmの厚さで交互に並べた多数の量子井戸によって形成される人工的な構造である。隣り合う井戸の内部の電子状態が結合し,一連のミニバンドを形成する。
⁂ 半導体レーザ;ここで述べる半導体レーザはpn接合を利用した普通のダイオードレーザではなく,量子井戸レーザのことである。電子と正孔は狭い量子井戸層内に閉じ込められて,効率良くレーザ発振を起こす。
† 高電子移動度トランジスタ(HEMT);High Electron Mobility Transistorの頭文字を取って「へムト」と呼ばれ,半導体へテロ接合部に生じる高移動度の電子層(または正孔層)をチャネルとするトランジスタである。
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