半導体用語集

高電子移動度トランジスタ(HEMT)

英語表記:High Electron Mobility Transistor

 Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体ヘテロ接合を用いた電界効果型トランジスタの一種で、電子親和力の異なる半導体をヘテ口接合し、かつ電子親和力の小さな半導体側にのみドナー不純物を添加する、いわゆる変調ドーピングが施されていることが特徴。1980年、富士通の三村らによって開発された。電子はヘテロ接合界面のポテンシャルの井戸に二次元電子ガスとして閉じ込められ、 ドナーと空間的に分離されるため、イオン化不純物散乱の影響が少なく、低温で高移動度を示す。またGaAsMESFETにくらべ、ゲートチャネル間距離が実質的に短くできることから、チャネルの縦横比が大きく、ショートチャネル効果に強い。その結果、微細化による高性能化により、50nmゲートでƒᴛが340GHzが報告されている。この値はすべての電子デバイスの中で最も高い値である。通常はチャネル層上にドナー不純物を入れた電子供給層が積層されるが、ゲート耐圧を上げるために、電子供給層/チャネル層/ゲート電極の順に積層したものを逆HEMTと呼ぶ。ヘテロ接合の形成には、MBE法(分子線エピタキシャル成長法)あるいはMOCVD法(有機金属気相エピタキシャル成長法)と呼ばれる原子層レベルで膜厚制御できる方法が用いられる。材料系としては、当初用いられていたAlGaAs/GaAsの他に、チャネルに歪を加えたAlGaAs/InGaAsや、信頼性の優れたInGnP/GaAs、さらに高速・高周波特性に優れたInAlAs/InGaAsなどが開発されている。歪チャネルHEMTでは、雑音指数4GHzで0.3dB、12GHzで0.5dB程度のものが実用化されている。応用分野としては、900MHz帯の携帯電話用高効率FET、衛星放送受信コンバータ用MMIC、自動車レーダ用76GHzMMIC、衛星搭載用2GHzシグナルプロセッサMMICなどがある。HEMTは、MESFETにくらべて基板あるいは作製コストが高いため、MESFETでは到達できない高速・高周波帯用途に用いられている。

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