半導体用語集

エネルギー帯

英語表記:energy band

 自由電子のエネルギーEは |k|²(k;電子の波数)に比例して連続的に変化する。一方、結晶中を自由に動き回る電子は、結晶格子に対応した周期的なポテンシャルを感じ、この結果電子の取りうるエネルギーは複数の帯(許容帯)に分裂し、許容帯と許容帯の間に電子が存在できない禁制帯が形成される。このようなエネルギー構造をエネルギー帯と称し、結晶の対称性を強く反映した形を示す。結晶中の自由電子の持つエネルギーEと波数(運動量)kの関係は、逆格子空間のすべてのkに対し計算されるものであるが、|k|<=2π/aの第ーブリュアン領域にすべて還元して表わすことができる。さらに、結晶の対称性から一部の重要な対称点と、それを結ぶ対称線上のエネルギー値を示せば、結晶の性質を理解するのに十分である。Si、Geのようなダイヤモンド型やGaAs、InPなどのせん亜鉛鉱型の結晶構造では、重要な対称点はブリュアン領域の中心Γ=2π/a(0,0,0)、L= 2π/a(1/2, 1/2, 1/2)、X=2π/a(0,0,1)、K=2π/a(3/4, 3/4, 0)の各点であり、エネルギー帯ではΓ点からそれぞれ L、X、Kの各点に向う対称線に沿ったエネルギー値が示されるのが一般的である。エネルギー帯に結晶が持つ電子を入れていった場合、許容帯の途中まで電子で満たされる場合には、電子は自由に動くことができ結晶は伝導体となる。これが金属である。これに対し、許容帯がちょうどいっぱいまで満たされ、電子に満ちた許容帯と電子がまったくない許容帯が禁制帯を隔てて存在する場合には、電子は自由には動けなくなる。この後者のタイプの結晶のうち、電子に満ちた許容帯と電子がまったくない許容帯を隔てている禁制帯幅(バンドギャップ)が広いものを絶縁体、バンドギャップがおよそ3eV以下で、不純物などにより伝導特性が制御できるものを半導体と呼んでいる。半導体はそのバンドギャップの大きさにより、InSb、InAsのような狭ギャップ半導体からGaNのようなワイドギャップ半導体まで様々な種類が存在する。また、バンドギャップのすぐ下の許容帯(価電子帯)の最高エネルギー点はΓ点にあるが、バンドギャップのすぐ上にある許容帯(伝導帯)の最低エネルギー点はGaN、GaAs、InP、InAsなどのようにΓ点にある場合と、Si、AlAs、GaPなどのようにΓ点以外にある場合があり、前者を直接遷移型半導体(「直接遷移型半導体」の項参照)、後者を間接遷移型半導体(「間接遷移型半導体」の項参照)という。

関連製品

「エネルギー帯」に関連する製品が存在しません。

関連用語

関連特集

「エネルギー帯」に関連する特集が存在しません。




会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。