半導体用語集
クーロンブロッケード
英語表記:Coulomb blockade
静電容量Cを持った極微小トンネル接合では,温度が低くなり,接合に電子が1個たまっている時の静電エネルギーe²/2 Cが熱エネルギーよりも大きくなると,電子が電極間を移動することができなくなる。この現象は,電子間のクーロンエネルギーが電子のトンネルを抑制するという意味で,クーロンブロッケードと呼ばれる。
接合の帯電エネルギーEcと接合にたまっている電荷Qとの関係は,Ec=Q²/2 Cで与えられる。Q<e/2の領域では,接合に電子を1個加える過程(Q+e),または1個引き去る過程(Q-e)ともに,終状態のエネルギーが増加し,電荷の移動は起こらない。電荷Qがe/2よりも大きくなると,終状態のエネルギーが始状態のそれよりも小さくなる過程が可能になり,電流が流れ始める。したがって,クーロンブロッケードが効いている状態では,トンネル電流は,バイアス電圧Vがe/2 Cよりも低い場合には0で,Vがe/2 Cよりも大きくなったところで急に電流が流れ始め,下記の式に従う。ここに,Rtは接合のトンネル抵抗である。
このようなクーロンブロッケードが観測されるためには,Rt》h/4 e²を満たす必要がある。さらに,配線を通しての電荷の再分配が高速で起きないように,接合の近傍に高抵抗の接合をもう一つ挿入するか,接合の極近傍に高インピーダンスの配線をつけるなどの工夫が必要である。
最も一般的にクーロンブロッケードが観測される構造は,クーロン島と呼ばれる極微細ドットに高抵抗のトンネル接合を介してソース電極とドレイン電極を接続した単一電子トンネルトランジスタ(single electron transistor:SET)構造で,極低温においてゲート電圧を掃引すると,ソース-ドレイン間に流れるトンネル電流がクーロン振動と呼ばれるほば周期的なピーク構造を示す。また,ドレイン電圧を掃引すると,クーロン階段(Coulomb staircase)と呼ばれるステップ的に増加するトンネル電流が観測される。
近年,10nm級の量子ドット構造も実現され,室温においても単一電子トンネル現象を観測することも可能になりつつある。クーロンブロッケードを利用したインバータや単一電子メモリ素子などのデバイス応用も研究されている。
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