半導体用語集

量子ドット

英語表記:quantum dot

 三次元的にキャリアを閉じ込めた構造で、その寸法がキャリアの波長程度かそれ以下で、閉じ込めによる状態密度の変調(零次元準位の形成)が生じているものを量子ドットという。ただし、意味を広くとらえてクーロンブロッケードのような古典的効果であっても、微細ドット構造に特有な特性が発現している場合には、量子ドットという場合もある。量子箱も同じ意味で使われる。量子ドットを作成する方法には、結晶成長により作成された量子井戸構造や、二次元電子ガス構造を電子ビームリソグラフィとエッチングなどの組み合わせで加工する方法、集束イオンビームによる混晶化などを用いて加工する方法、微細なショットキゲートによる空乏層(「空乏層」の項参照)の制御で作成する方法、ならびに、自己組織化島状構造を結晶成長法で直接作成する方法(「自己組織化量子ドット」の項参照)などがある。電子伝導を測定する研究においては加工の損傷が少なく、閉じ込めポテンシャルを制御でき、かつ単ードットの特性を測定できる利点から、微細ショットキゲートによる構造形成が主流である。しかし、この方法では電子と正孔を同じ位置に閉じ込めることは不可能なため、光学測定には適用できない。最近は光学特性の評価には自己組織化量子ドットが用いられることが多い。また、ヘテロ界面の原子オーダのゆらぎを利用すると、周囲より1原子層井戸幅の広 い部分が低温では量子ドットとして振る舞う。これを利用して量子ドットの特性を調べる実験も、主に顕微ルミネセンス測定やナノ光学プローブを用いて行われている。量子ドットで最も理想的な構造の一つは、 ドット内に不純物の存在しない円形ディスク状のドットである。この中にはパラボリックな閉じ込めによる理想的な零次元準位が形成されるが、零次元準位の縮退はちょうど一般原子の周期律に対応する特性を生み出す。サイドゲートでドット内の電子数を変化させた最近の実験において、単一電子トンネル電流のピーク位置にこの特性が反映されている。このような対称性の保たれた理想的な量子ドット構造を、原子とのアナロジーから人工原子と呼ぶこともある。人工原子では縮退した準位に上向き、下向きのスピンを持った電子が入る場合のフント則も観測されている。量子ドットを二つ並べたものを結合量子ドット(人工分子→結合量子箱構造)、多数並べたものを量子ドット網、あるいは量子ドットアレーと呼ぶ。これらの複雑な構造については最近研究がスタートしたが、量子力学的結合状態の実現とその制御が可能なことから、将来の量子計算に繋がる固体構造として期待されている。


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