半導体用語集

エピタキシー

英語表記:epitaxy

 epi=uponとtaxis= arrangementの二つの語からなるエピタキシーは、固体基板の上に基板の構造を受け継ぎ成長させる手法または形態をいう。一般に基板としては周期的な原子配列を持つ結晶を指し、基板上に成長する結晶はこの基板結晶の原子配列を受け継ぐ。受け継ぐ基板の構造が原子スケールより大きい場合にもエピタキシーという術語が用いられることもある(「グラホエピタキシー」の項参照)。また基板結晶表面上にエピタキシー原料を供給する際、気相を介して輸送される場合を気相エピタキシー、液相を介する場合を液相エピタキシーという。
 エピタキシャル成長結晶が、基板と同じ結晶の場合にはホモエピタキシー、組成や結晶構造が異なる異種の結晶の場合にはヘテロエピタキシーと呼ばれる。
 エピタキシー技術は、工業的にもきわめて重要な技術となっており、とりわけ半導体技術の薄膜形成プロセス技術においては数々のエピタキシー技術が用いられている。
 基板結晶の上に新しい結晶が気相工ピタキシャル成長(epitaxial growth)する場合を考えてみよう。基板表面に供給された原料原子(分子)は表面吸着され、 さらに吸着原料原子同士間の反応などの表面反応過程を経て、いくつかの原子が集まったクラスタが形成される。クラスタはさらに合体、離散を繰り返しながらより大きな島状結晶に成長していく。この時の成長様式は、便宜上三つに分類されている。一つは、基板表面の上に粒子状に三次元的な結晶が成長する場合であり、Volmer-Weber型成長様式と呼ばれている。次は、エピタキシャル結晶が1層づつ順序よく成長する場合であり(layer-by-layer)、Frank-van der Merwe型成長様式、または層状成長と呼ばれている。三番目の成長様式は最初の1層ないし数層は層状成長するが、その後三次元的な成長に変化する場合であり、Stranski-Krastanov型成長様式と呼ばれている。実用上、二番目の層状成長様式のエピタキシャル成長を行わせる場合が多いがその目的としては、(1)容易に入手できない結晶の結晶薄膜(ヘテロエピタキシャル膜)の成長、(2)基板結晶より欠陥の少ない結晶性の優れた薄膜成長、(3)不純物濃度を所望の値に設定、(4)ヘテロ界面の引き起こす物理を利用する材料系の成長などがあげられよう。特に四番目のエピタキシーは、バンドギャップの違いを利用した半導体素子などにおける電子や正孔などのキャリアの閉じ込め、二次元電子ガスの発生、多層ヘテロエピタキシャル薄膜で生ずる量子効果の発生など近年学問上でも、応用上でもきわめて重要な技術となっている。
 層状成長エピタキシー技術の進歩は、半導体を中心として目覚ましく、いまや原子1層オーダで成長膜厚を制御可能にしつつある。一方、近年のナノオーダ構造作製技術という観点からStranski-Krastanov成長様式や三次元成長様式を積極的に用いるという流れができつつあり、量子ドットレーザなどの半導体素子の結晶成長などに応用されようとしている。


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