半導体用語集
エミッション顕微鏡法
英語表記:Emission microscopy
エミッション顕微鏡法を用いれば,極微少な発光を顕微鏡的視野で観測できる。これにより,各種の欠陥や異常を検出することができる。人間の眼の感度より数100万倍以上高感度といわれるエミッション顕微鏡を用いてLSI,チップ上の発光箇所を観測する方法は,Khuranaらにより,1986年に発表された。
彼らが最初に用いた装置構成の概要は次のようなものである。チップ上で発生した光は対物レンズを通った後,一度電子に変換され,マイクロチャンネルプレートで増幅され,再び光に変換される。これをテレビカメラでとらえ,イメージプロセッサで光学像と重ね合わせた後,表示する。この像をみることで発光がどこで起きているかを光学像上の位置で同定できる。最近では冷却CCDを使用するなど,多くのバリエーションがある。空間分解能は1µm以下である。
非常に多くの故障モードがエミッション顕微鏡法により,検出可能である。以下に今までに報告されている代表的なものを列挙する。
(1)ESDにより破壊された酸化膜
(2)酸化膜の欠陥
(3)配線の断線やビア(接続部)のオープンによるゲートのフローティング
(4)不安定なゲート電位に起因するスタンバイ電流の増加
(5)アロイスパイクに起因するラッチアップ
(6)ビア部の高抵抗化により引き起こされた立ち上がり時間の遅れ
(7)接合部の欠陥
(8)MOSFETにおける降伏現象
(9)高抵抗ショート
(10)アルミ配線間のフィラメント状ブリッジ
(11)エレクトロマイグレーションにより損傷を受けた部分
このうち,(1)から(8)は,
a) 絶縁膜中を流れるトンネル電流に関連した発光
b) MOSデバイスにおけるホットキャリアに関連した発光
c) pn接合部での順方向電流に関連した発光
d) pn接合部での逆方向電流に関連した発光
e) a)からd)の組み合わせ
のどれかに相当する。
また,発光のメカニズムとしては,エネルギーバンド内遷移発光,バンド間遷移発光,制動放射のいずれか,あるいはその組み合わせであると考えられている。
(9)から(11)は熱放射,すなわちPlank放射によるものと考えられている。
発光のスペクトルを分類することで,故障のモードを推定することも試みられているが,まだ実用的には普及していない。
エミッション顕微鏡で検出できる光の波長範囲の長波長側は1.1µm程度まであるので,チップ裏面側からの観測も可能である。
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