半導体用語集

ガン効果

英語表記:Gunn effect

 ガリウムヒ素(GaAs)などの化合物半導体結晶に,数kV/cm以上の高電場を印加した時発生する電流振動の現象。1963年,J.B.Gunnにより発見された。この効果は,化合物半導体の伝導帯のバンド構造に基づく微分負性抵抗によって引き起こされる。低電界においては,電子は有効質量の小さいΓ谷付近の波数領域に存在し伝導しているが,電子が高電界により加速されると,大きな波数領域にエネルギー極小を持つL谷付近に分布するようになる。このL谷付近の伝導帯の有効質量は,Γ谷の質量より重いので,電子の平均速度は減速され,電流が減少する。このような機構により,ガリウムヒ素などの化合物半導体中の電子の速度-電界特性は,数kV/cmのところに極大値を持つ微分負性抵抗を示すようになる。
 一般に,固体中で発生した電子密度などのゆらぎは,τr=ε/eμn(ε:誘電率,e:電荷素量,μ:微分移動度,n:電子密度)で表わされる誘電緩和時間τr程度で,exp(-t/τr)のように指数関数的に減少する。ところが,微分負抵抗領域ではμが負になるため,わずかな電界や電子密度のゆらぎなども指数関数的に増幅され,5~30μm程度の幅を持つ電界が不均一に集中した領域(高電場ドメイン;high field domain)が形成されるようになる。この高電界ドメインが,約10⁷cm/sの速さで陽極に向かって走行し,そこで消滅する。これを繰り返すことにより電流振動が発生する。電流振動に伴って放出される電磁波の周波数は数100MHzから数10GHzであり,ガンダイオードと呼ばれる固体マイクロ波発振素子として用いられている。ガン効果は,GaAsの他に,InP,ZnSe,CdTeなどでも観測されている。


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