半導体用語集

ガン効果

英語表記:Gunn effect

 たとえばGaAsの場合には、伝導帯のエネルギー最小点は、電子の有効質量の小さいΓ点に存在し、それよりエネルギーが約0.3eV高いL点に有効質量の大きい第二のエネルギー極小点が存在する。このような半導体の場合、室温で、低電界では大部分の電子がΓ点に存在し、小さい有効質量を反映して高い移動度を示す。試料に加える電界を増加していくと、電子は次第に加速され、ついにはエネルギー差を越えてL点に散乱されるようになる。こうなると有効質量が増大し、電子の速度にブレーキがかかる。結果的に電界を大きくしていった時の電子の平均速度は非線形になり、ある電界以上では逆に減少し、負の微分抵抗が生じる。なお、伝導帯の底と第二極小点のエネルギー差がバンドギャップに近い場合には、第二極小点に電子が励起されると同時に価電子帯から伝導帯への電子の励起も生じることになり、このような現象は観測されなくなる。 GaAsのようにちょうどこの現象に適したバンド構造を持つ試料に適当な定電圧を加えると、L点に散乱されてブレーキのかかった電子により電子蓄積層が形成される。この時、その前面ではΓ点の速度の速い電子が先に行ってしまい空乏層ができる。この蓄積層と空乏層は、空間的な電界の分布を生み試料中を走行する。このドメイン(電気二重層)が電極に到達すると、電界は再び一様になり反対側の電極から再びドメインが成長し始める。この結果電流は(試料の長さ)/(ドメインの走行速度)の交流成分を有するようになる。この発振現象は1963年にJ. B. Gunnにより実験的に確かめられガン効果と呼ばれるようになった。発振周波数がマイクロ波帯に当たるためマイクロ波発振器として広く用いられ、動作条件や材料定数による様々な動作モードが研究されている。なお、Γ点、L点以外にも二準位間の移動度差を用いた構造では、電圧-電流特性に負の微分抵抗が観測されるものがあり(「実空間遷移」の項参照)、これらは発振器に応用することが可能である。

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