半導体用語集

フリップチップ方式

英語表記:flip chip bonding

 べアチップ実装技術の一つで,半導体チップの電極パッド上に突起状電極(バンプ)が形成され,相対する基板上の電極パッドに対して位置合わせして実装する方式。
 フリップチップ方式は,ワイヤボンディングと比較すると技術が複雑でコストがかかるため,従来は,ICの接続端子数が多く高速動作が必要なスーパーコンピュータなどのハイエンド製品で主に用いられきた。しかし,最近では低コストなフリップチップ方式の開発も盛んに進められている。また,時計などでは薄型,小型の利点から,自動車用電装部品では耐振性,耐衝撃性,温度環境などの利点から,比較的古くからフリップチップ方式が使用されている。LCDドライバなどのガラス基板へのフリップチップ実装,COG(Chip On Glass)も適用されつつある。
 フリップチップ方式には,バンプの種類,および実装する基板の種類により,様々な手法が存在する。バンプ電極には,はんだ,Au,Cu,Inなど,種々の金属や合金材料が用いられている。特に,はんだバンプを用いた方式は,1960年代初めにIBM社(米国)が開発したC4(Controlled Collapse Chip Connection)技術が広く知られている。
 基板材料は,樹脂系基板(FR-4など),セラミック基板(アルミナなど)が用いられる。樹脂系基板を使用する場合には,半導体チップと基板の線膨張係数差による接続部の破壊を防ぐために,半導体チップと基板間の空隙に樹脂を充填する。フリップチップ実装技術を用いると,実装に必要な面積が半導体チップの面積とほぼ等しく,他の半導体実装技術と比較してはるかに小さく,高密度実装を達成できる。また,接続配線長もバンプ電極の高さ分のみであり,電気的特性も他の実装技術にくらべて,はるかに良好である。電極パッドを半導体チップ全面に配置でき,多ピン化にも適している。さらに,半導体チップの裏面が露出しているために,放熱も容易であるなどの特徴を持つ。そのため,高密度実装を要求される携帯用電子機器や,多くのピン数を必要とし,高速かつ消費電力の高い汎用大型計算機用半導体素子などに採用されている。その反面,接続部分が半導体チップと基板との間にあるために,目視による検査ができないなどの短所がある。
 フリップチップ接続方式は,大別すると,はんだによる接続と異方性導電材料による接続の2方式がある。はんだによる接続方式は,IBM社を中心に古くから実用化され技術開発も進んでおり,ICの素子面上で接続するエリア接続が可能なため,小さいチップサイズで多数の接続端子が引き出せる利点がある。また,他のフリップチップICや抵抗,コンデンサなどの実装部品とリフロー工程で一括接続が行える利点もあり,はんだ接続方式はフリップチップ方式の中では最も普及している。
 異方性導電材料での接続方式は,特殊な設備を必要としないバンプ形成方式であるAuボールバンプと組み合わせて使用されることが多い。異方性導電材料とAuボールバンプの組み合わせにより,ワイヤボンディング用に設計,製作された既存のICを用いて,特殊な設備を使用することなく,薄型,小型のフリップチップ実装が可能となる。一般的に,異方性導電材料による接続は,はんだによる接続と比較すると,信頼性と接続抵抗が劣るという欠点があるが,民生用の電子製品では,十分適用可能な製品もあり,徐々に普及しつつある。


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