半導体用語集

ホットキャリア効果

英語表記:hot-carrier effects

 MOSFETのゲート長が1µm素子からサブµm素子に縮小されていく際に、電源電圧は5Vのまま下げずに使いたいという要請が強かった。その中でホットキャリア劣化の問題が浮かび上がってきた。つまり、スケーリング則で予測されるよりも電界が高くなり、ドレイン付近の電界が極度に高くなり、電界で加速されたキャリアがゲート酸化膜中に飛び込んでトラップされてしきい値を変化させたり、界面の結合を切断して界面準位を形成して、モビリティを下げたりという現象が顕著になってきた。ドレイン付近の高電界で加速された電子がホットキャリアの正体であり、これは上記信頼性以外にシリコン基板中で衝突電離(インパク トイオン化)を引き起こし、電子・正孔対を作る。ここで作られた正孔は、基板中に流れ出し(p型基板でのnMOSFETを仮定)、基板正孔電流となる。ここでの衝突電離現象も、酸化膜あるいは界面での欠陥生成も、電界で加速された電子のエネルギーに依存して起こるものであるから、基板電流の大きさを観測することで信頼性の程度を見積ることができる。その後、ホットキャリア信頼性とは基板電流を評価することだと思われるくらいに、素子を改良すると基板電流を測ってみるというのが常套手段になった。実際には、ホットキャリアの一部は酸化膜を超えてゲート電極までに到達してゲート電流として観測されるものもあるが、このゲート電流が大きいというバ イアス条件よりも基板電流が大きいという条件の方が信頼性上はダメージが大きい。これは、基板電流が大きい条件は、ホットキャリアのエネルギーと その量の積が最大になるようなポイントに対応しており、酸化膜を通りぬけることが劣化の本質ではないことからきている。ゲート長が1µm程度のところでは、LDD構造(Lightly Doped Drain構造)という電界緩和方法がデバイス技術として開発された。さらなる微細化領域では電源電圧が3.3 Vに落ちることで、一時的に急激にホットキャリア信頼性の話題は姿を消す。しかし、0.25µm領域では、再び3.3Vでは電源電圧が高すぎ、ホットキャリア効果が懸念される。さらに、ゲート長が0.1µmあるいはそれ以下になってくると、電界がよいパラメータではなくなってくる可能性がある。つまり長チャネル素子では、局所的電界を決めると、そこで電子のエネルギーが一意的に決まってた。しかし、極短チャネル素子では、電子が加速されて定常状態にならないうちに大きな電界領域に飛び込んでしまうので、電子のエネルギーがそこでの局所的電界では規定されない。つまり、そこに至るまでの電子の履歴によって影響されてしまうことになることが予測されている(非定常効果)。ホットキャリアの問題に関しては、デバイス内の詳細かつ定量的電界分布を知ることが必要になり、それによってデバイスシミュレーションの進展が促され、デバイス動作自身の理解が大きく進んだことも見逃せない。さらに0.1µm以下の輸送現象では、直感以上のキャリアの非定常効果が現われてくると考えられ、ホットキャリア効果は信頼性のみならず、輸送現象そのものに立ち入ってくることになる。

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