半導体用語集

ラマン散乱分光法

英語表記:Raman spectroscopy

 物質に単色の光を照射すると,その光は物質中のフォノンで変調され非弾性散乱をうける。入射光と同じ波数を持つ散乱光をレーリー散乱光と呼び,フォノンのエネルギー分だけ入射光から波数のずれた非弾性散乱光をラマン散乱光と呼ぶ。ラマン散乱光の波数や散乱強度を測定して物質の性質を調べる手法をラマン散乱分光法と呼ぶ。物質の組成,結晶構造,歪,不純物挙動などのフォノンに敏感な多くの特性を比較的容易にかつ非破壊で評価できるために半導体の評価技術として広範囲に用いられている。
 物質中におけるラマン散乱の断面積は小さいため,ラマン散乱光強度は入射光強度の10⁻⁵程度と非常に弱い。S/N比よくラマン散乱光の測定を行うには単一波長で500mW程度のパワーを有する入射光が必要である。したがって光源にはレーザ光が用いられている。一般的にはアルゴンレーザ,クリプトンレーザや色素レーザが用いられることが多い。ラマン散乱光は入射光の侵入長程度の領域で生じる。代表的な半導体の場合,侵入長深さはおおよそ0.1µm程度である。したがってラマン散乱分光法は基板上のエピタキシャル成長層のような薄膜材料の評価に適しているといえる。半導体中へのレーザ光の侵入深さは,波長が長いほど深くなる。したがって,半導体内部の評価をする場合には赤外領域のレーザ光を用いることが有効である。
 ラマン散乱光はレンズなどで集光され分光器に導かれる。散乱に伴う種々の迷光を取り除き,微弱なラマン散乱光を精度よく分光するために,分光器を複数組み合わせたダブルモノクロメータ,あるいはトリプルモノクロメータが通常用いられる。低温あるいは高温状態で測定を行う場合もあるが,一般的な半導体評価の場合,室温・大気中の測定で十分である。


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