半導体用語集

不純物濃度分布

英語表記:impurity density distribution

 半導体素子を製作するためにはヒ素やリン、ホウ素のような不純物をイオン注入や拡散によって半導体中に導入する必要がある。このようにして導入された不純物はその濃度と位置の関係が近似的にガウス関数や相補誤差関数で表わされるような不純物濃度分布を持っている。このような不純物濃度分布において、不純物濃度が最大値の1/√2になる分布の幅を分散と呼ぶ。たとえば、イオン注入によって半導体中に不純物を導入した後高温で熱処理すると、不純物は拡散して最大となる不純物濃度の値は滅少し、分散は増大する。微細MOSトランジスタを製作する際にはソース・ドレイン領域とチャネル領域の不純物分布の制御が重要となる。ソース・ドレイン領域の不純物分布は低抵抗で浅い拡散層の形成と電界緩和の二つの観点からその制御が重要となる。低抵抗で浅い拡散層の形成は短チャネル効果を防止してソース・ドレインの抵抗を下げるのに効果的である。ヒ素はその不純物濃度分布の形状がガウス分布よりは矩形分布に近くなるので低抵抗で浅い拡散層の形成に向いている。電界緩和の点からは、リンやホウ素のように不純物濃度分布の濃度勾配が緩やかになるような不純物が望ましい。不純物濃度分布の勾配が緩やかなほど電界緩和できるからである。素子寸法が0.1µmまたはそれ以下にまで小さくなってくると電界緩和よりは低抵抗で浅い拡散層(極浅接合)の形成が重要となってくる。そのため、0.1µmまたはそれ以下の寸法をもつ極微細MOSトランジスタでは、浅くて比較的濃度の高い不純物領域と深くて高濃度の不純物領域が隣接したようなソース・ドレイン構造を採用している。このようなソース・ドレイン構造において、浅くて比較的濃度の高い不純物領域をソース・ドレイン拡張部(extension)と呼んでいる。
チャネル領域の不純物濃度分布の制御はチャネルエンジニアリングとも呼ばれ、短チャネル効果の抑制および電流駆動能力の向上の両方から大変重要である。比例縮小則からも明らかなように、短チャネル効果を抑制するためにはチャネル領域の不純物濃度を高くする必要がある。しかし、チャネル領域の不純物濃度が高くなりすぎると、しきい値電圧が高くなってドレイン電流が減少する。また、チャネル領域の不純物濃度が高いと動作時の表面垂直方向電界が大きくなって移動度が低下し、それによってもドレイン電流が減少する。ソース・ドレインの接合容量も大きくなるので動作速度も低下する。そのため、微細MOSトランジスタではチャネル領域表面の不純物濃度はあまり高くせずに、短チャネル効果に効いてくる空乏層領域の不純物濃度を高くするようにしている。したがって、この場合の不純物濃度分布は、表面から少し奥に入ったところで濃度が最大になるような逆行性不純物濃度分布(retrogradeimpurity profile)となる。この逆行性不純物濃度分布の分散を1原子または数原子に相当するまでに小さくした場合をδドープや原子層ドープと呼んでいる。また、素子寸法が0.1µm以下となるサブ0.1µm素子ではチャネル領域の表面電界がますます増加して移動度の低下が激しくなることと、チャネル領域の不純物の数の統計的なゆらぎによる特性のばらつきが大きな問題となるため、これらの問題を解決する方法として、比較的濃度の高い不純物領域の上に不純物を含まないイントリンシック領域をエピタキシャル単結晶成長により形成する方法も検討されている。このようにして形成した5∼20nmのイントリンシック領域を電流パスであるチャネルとして使う。このようにすると、 チャネル部分には不純物が含まれていないので表面電界が小さく、移動度の低下も少ない。また、不純物が含まれていないので不純物の数の統計的なゆらぎによる特性のばらつきも抑えられる。短チャネル効果はイントリンシック領域の下に形成された高濃度の不純物領域で抑制する。このようなチャネル領域をもつMOSトランジスタをイントリンシックチャネルMOSトランジスタと呼んでいる。

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