半導体用語集

化学シフト

英語表記:chemical shift

分子や、金属以外の固体の核磁気共鳴において、外部磁場Hによって誘起された電子系の磁気モーメント(Hに比例する)が原子核に及ぼす内部磁場のために起こる共鳴周波数のずれのこと。基準の共鳴周波数をそれν0、それからのずれを⊿νとして、普通⊿ν/ν0で表わし、δと書く。ずれは、注目する原子核の電子状態、したがって化学結合の様子によって異なり、 普通10-6~10-4度であるが、まれには10-1に及ぶこともある。そのため、δはppm (=10-6)単位で記述されることが多く、δ 値を用いると測定に用いた共鳴周波数に関係なく化学シフトを統一的に表現できる。原子核に束縛された電子軌道運動による反磁性の効果は負のシフトを与え、 反磁性効果と呼ばれる。外部磁場によって電子の軌道関数の基底状態に励起状態が混しる軌道常磁性による効果は正のシフトを与え、常磁性効果と呼ばれる。プロトン(IH)の化学シフトはいろいろの原子核の化学シフトのうちで最小であるが、これから分子構造に関する多くの知見がえられる。近年は13C核など他の核の化学シフトも観測され、構造的要因と関連する精度の高い情報として化学構造の解析に重要な役割を果たしている。IHおよび13CNMRでは基準として、それぞれテトラメチルシラン(TMS)のプロトンおよび炭素の共鳴線が用いられる。ほとんどの有機化合物のプロトンの化学シフト差は10ppm程度であるから、TMSの化学シフトを10として、г=10-δ で表わすこともあるが、現在はあまり用いられない。化学シフトは本来NMR スペクトルについて観測された現象であるが,化学構造によるスペクトル線の位置の違いは、X線スペクトルや ESCA (電子分光法)にも認められ、これらの分野でも重要な概念となっている。


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