半導体用語集

反射防止膜

英語表記:anti-reflection coating

 解像力と焦点深度を同時に改善するために、光リソグラフィ技術で用いられている光の短波長化が進んでいる。その際の問題点は、基板反射率の増大である。たとえば、シリコン基板のg線(436 nm)での反射率は24%であるが、i線(365 nm)では41%、KrFエキシマレーザの波長である248 nmでは53%である。基板反射率の増大は、定在波効果を顕在化させる。定在波が発生する原因は、入射光と、レジストと基板界面からの反射光とが、レジスト膜内で多重干渉を起こすことによる。半導体デバイスは表面に凹凸を有しているため、ウェハ面内で均一にレジストが塗布されていることはなく、基板の凹凸に応じてレジストの膜厚は変化している。そのため定在波効果が存在するとレジストに吸収される光量がレジスト膜厚に依存して変化する。波長をλ、レジストの屈折率をnとすると λ/2n の周期である。結果として、レジスト膜厚の変動や下地膜厚の不均一性により、回路パターンの線幅が変動してしまう。さらに、基板からの反射光が段差部で乱反射を起こし、ノッチングと呼ばれる回路パターンの断線を引き起こす。これら現象は、入射光とレジストと基板界面からの反射光とが、レジスト膜内で多重干渉を起こすことによるものゆえ、露光波長の短波長化による基板反射率の増大により、定在波効果が顕著化することは明白である。
 レジストに入射した光の成分は、
①表面反射も含めた反射成分、
②レジスト膜内での吸収成分、
③基板での吸収成分、
の三成分に分けられるが、実際にレジストの感光反応に寄与するのは、②の成分である。すなわち、レジスト膜内における入射光の干渉による②の成分の変動が線幅変動をもたらす。この②の成分の変動を押え込む技術が反射防止技術である。反射防止膜は、有機、無機系を問わずレジストの下層に配置するタイプと、レジストの上層に配置するタイプとがある。レジストの下層に配置するタイプの反射防止の原理は、レジストと反射防止膜界面からの反射光と、反射防止膜と基板界面からの反射光とが、互いに位相が反転し、振幅が同じになり、重ね合わせられた結果、お互いに打ち消すような、光学定数および膜厚を有する膜を反射防止膜として用いる方法である。レジストの下に反射防止膜を用いた場合、レジスト内に存在する光は、入射光のみとなる。一方、レジストの上層に配置するタイプの反射防止膜は、エタロンの原理を用いたものである。すなわち、レジストと上層膜界面での反射光と、空気と上層膜界面での反射光とが、ちょうど位相が反転していて振幅が同じになるように、屈折率が √n であるような透明膜を λ/4n の膜厚で用いる方法である。
 半導体プロセスに用いる反射防止膜には、カメラレンズなどの光学機器にて用いられている反射防止膜と比較して、半導体プロセスゆえの特殊な性能が要求される。たとえば、半導体プロセスにて用いられる反射防止膜は、反射防止膜としての機能を果たした後に、エッチングなどの次工程によって選択的に除去される。そのため、エッチングの容易性、すなわち除去方法の容易性は、半導体プロセスにおいて重要な項目である。

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