半導体用語集

熱解析

英語表記:thermal analysis

 パッケージを熱設計する際には,あらかじめ熱抵抗値を予測するための熱解析を行う必要がある。解析ツールという観点から熱解析を分類すると,(1)熱回路網法(節点法),(2)熱伝導解析法,(3)熱流体解析法(流熱法)などがある。(3)で大規模なモデルを計算する場合を除き,パーソナルコンピュータ,ワークステーションレベルで解析できる。

 (1) 熱回路網法(節点法)
 熱回路網法は,パッケージの伝熱経路を抵抗網でモデル化して熱抵抗を計算する。単に抵抗だけでなく,熱容量(キャパシタンス)を盛り込むことで過渡解析(非定常熱伝導解析)も可能である。手計算的に熱抵抗の見積りを行うことができ,シングルチップパッケージからマルチチップパッケージまで,応用性の高い非常に便利な方法である。この方法では,三次元のパッケージをどのような熱抵抗ネットワークに置き換えるか,その組み方によって解の精度が決まるため,精度のよい計算を実現するためには,モデル化に関するノウハウの蓄積が必要である。

 (2) 熱伝導解析法
 熱伝導解析法は,パッケージを周囲に境界条件を有する有限個の熱伝導要素の集合体とみなし,熱輸送方程式(微分方程式)を解くことによって各要素の温度を求める。数値解析法として有限要素法(FEM: Finite Element Method)や,有限差分法(FDM: Finite Difference Method)がある。一般には,複雑な形状への対応性から有限要素法(FEM)が用いられる。境界条件として入力する熱伝達率の値が計算結果の精度を決めるため,正確なシミュレーションには,実
測に基づいた熱伝達率のデータベース化が必要となる。現在では,数多くのFEM熱伝導解析ソフトウェアが市販されており,パッケージの熱解析の主流となっている。

 (3) 熱流体解析法(流熱法)
 熱流体解析法は,パッケージの周りに存在する空気,液体などの流体もモデル化して,流体による冷却挙動も考慮して解析する。具体的には,流体の流れ,エネルギーに関する微分方程式(連続の式,運動量の式,エネルギーの式)を解くことによって,流体による熱移動量を計算,これとパッケージ内の熱伝導問題を組み合わせることでパッケージ内の温度分布を計算する。熱流体解析法は,外部流体による冷却を境界条件で近似する熱伝導解析法にくらべ,より現実に近くかつ厳密に解析できるという利点がある。しかし,精度の高い計算には膨大な計算時間を要し,一般には,単体パッケージの熱抵抗を求める場合よりも,複数のパッケージを搭載した基板のレイアウト(部品配置)決定などに用いられる。


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