半導体用語集

自由キャリア吸収

英語表記:free carrier absorption

 金属や半導体中の自由キャリア(電子,正孔)が電磁波(光)との相互作用に基づいて,電磁波のエネルギーを吸収する効果をいい,プラズマ効果による(光)吸収ともいう。
 金属中の電子は電磁波の電界からカを受けて振動するが,固有の周波数(プラズマ周波数:ωp=(e²N/m*ε₀)^(1/2),eは単位電荷,Nはキャリアの濃度,m*は有効質量,ε₀は誘電率)を境にしてその周波数の上下で吸収の振る舞いが変化する。すなわち,プラズマ周波数以下では自由キャリアの振動は電磁波の周波数に追随するため,有限の屈折率を示し,また吸収が起こる。この時吸収係数は光の波長の2乗に比例し,連続スペクトルとなる。プラズマ周波数以上では自由キャリアの振動が追随しないために,屈折率は1に近づき,また吸収がなくなる。このため,プラズマ周波数以下で光は反射され,プラズマ周波数以上では容易に透過されることになる。この周波数が可視光や紫外光領域にある多くの金属の場合,この周波数以下の光を反射することに起因して,いわゆる金属光沢を持つ。
 半導体においては,キャリア濃度が金属にくらべて低いため,プラズマ周波数は赤外領域にあり,この波長域での光学特性に影響を与える。特にバンドギャップエネルギー以下のエネルギーの光に対する吸収は主として自由キャリア吸収に基づくものであり,吸収係数は光の波長のn乗で変化し,nは1.5から3程度の値をとる。半導体における自由キャリア吸収はフォノンの生成や消滅を伴うバンド内遷移による光吸収と考えることもできる。自由キャリア濃度が温度や外部刺激(光励起,電流注入など)に敏感に変化する半導体においては,その変化が光学特性を変化させることを考慮する必要がある。自由キャリア吸収の効果により,自由キャリア濃度の増加に対して屈折率は減少し,光吸収係数は増大する。自由キャリア密度の増加量を⊿N,光の波長をλとすると,屈折率の変化量⊿n,および吸収係数の変化量⊿αとしてそれぞれ,⊿n∝-⊿Nλ²,⊿α∝⊿Nλ²の関係がえられる。
 このような自由キャリアの増加による屈折率や吸収係数の変化は,多量の電流を注入する半導体レーザにおいてその動作特性に影響を与える重要な効果となる。すなわち,吸収係数の増大は発振しきい値を高める。また屈近率の変化は非変調時および変調時の発振スペクトル線幅を増大させたり,変調周波数の限界を低下させるなどの影響を与える。一方,電流注入による屈折率や吸収係数の変化を利用して,光スイッチや光変調器なども提案されている。


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