半導体用語集
表皮効果
英語表記:skin effect
導体に高周波電流が流れるとき、電流が作る磁場の時間変化により、内部の電流をうち消して表面の電流を強めるように誘導起電力が発生する。このように高周波の電流や電磁波が導体の表面近くだけに局在し内部に侵入しない現象を表皮効果という。ここで導体の面が平面で電場や電流が表面の場所によらず一様な場合を考えると、磁場、電流密度、電場、磁束密度、電気伝導率、透磁率、各振動数をそれぞれH、J、E、B、σ、μ、ωとして、マクスウェル(Maxwell)の方程式の微分形であるrotH=J、rotE =-∂B/∂tと、電流の湧き出しが途中で発生しないことからdivJ=0、rot・rotJ=grad・divJ-∇2JおよびJ=σE、B=μHの関係を用いてJを求めると、導体の深さzに対して、J =Jοℓ-j (ωσμ/2)1/2Z・ℓ- (ωσμ/2)1/2Zとなる。したがって、角振動数ωのJは電気伝導率σ、透磁率μの導体内においてℓ- (ωσμ/2)1/2Zのように深さzとともに急激に減衰する。特に電流の強さが表面の1/ℓとなるz = (2/ψσμ) 1/2を表皮深さ(skin depth) といいδで表わす。δの大きさは電流の周波数が高いほど、そして、配線の電気伝導率が大きいほど小さくなる。
LSI (Large Scale Integrated circuit)の多層配線に採用されるCu材料(σ=59.8×106S/m、μ=~4兀×10-7H/m)に対しては、500MHzで2.9μm、1GHzで2.1μm、100 GHzで0.21μm、1THzで0.065μmの表皮深さとなる。また、μの大きい強磁性体の導線では、実効抵抗が大きくなるので高周波抵抗の測定から高周波透磁率を知ることもできる。このように高周波電流は導体の表面近くに局在する性質を持っため、導体の有効断面積が減少し低周波の場合にくらべて電気抵抗が高くなるという特徴がある。LSIの多層配線はRC遅延低減化の観点から上層ほど幅、高さともに大きく設計されているが、表皮効果の影響はこの上層配線ほど深刻化して現われることになる。たとえば、Cu配線を用いた場合、線幅0.2μmの時には430 GHz、2.0μmでは4.3GHz、4.0μm では1.1 GHz, 8.0μmでは265 MHz、10μmでは170 MHz以上の動作周波数において表皮効果の影響が顕在化しはじめ、配線抵抗値の増大が生じる。すなわち、高周波デバイスでは配線断面積を大きくすれば単純に抵抗を低くできるというわけではなく、表皮効果の影響を考慮した配線寸法や形状にする必要がある。
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