半導体用語集
電磁レンズ
英語表記:magnetic lens
回転対称な磁場を用いて電子ビームを収束させる電子レンズのことを電磁レンズ (または磁界レンズ) という。この磁場中に電子を入射させると、電子はフレミングの左手則によって軸に向かう力を受け、光学の凸レンズと同様に収束される。回転対称磁場は、永久磁石リングまたは電磁コイルを用いることにより発生させることができる。 しかし、このようにしてできた磁界は広い範囲に広がっていて、長焦点レンズとしての作用しかなく実用的でない。このため図2に示すようにコイルを強磁性材料の容器(ヨークという)で囲み、その一部に隙間(ギャップ)を設け、そこで発生する強力な磁界を使って電子ビームを光学凸レンズと同様に収束させる。製作誤差や材科の磁気的不均一性に基づく回転対称性の崩れを軽減するため、隙間近傍に純鉄など高透磁率の材料で高精度に加工された磁極(ポールピースと呼ぶ)をつけて使うことが多い。電磁レンズの性能は光学レンズと同様に収差の良否によって決定され る。収差には球面収差、非点収差、歪曲収差、彎曲収差、コマ収差、色収差と非対象収差がある。透過型電子顕微鏡は軸上の収差を小さくするために、ポールピースのギャップとボアを小さく、強励磁で使用している。電子ビーム描画装置の場合は、スループットを向上するために、ウェハ上で大きく偏向する必要性があり、偏向による収差を小さくするために、ボア、ギャップとも大きくし、大偏向で収差の小さい設計となっている。光学レンズと異なり凹レンズの作製ができないため、収差の補正ができす、開き角 (NA)は5mradの大きさとなっている。
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