半導体用語集
高圧ブリッジマン法
英語表記:High-pressure Bridgman method
水平あるいは垂直ブリッジマン法のうち、特に高圧容器を用いる場合は高圧ブリッジマン法と呼ばれており、古くはZnSやGaPの結晶成長が高圧垂直ブリッジマン法で、最近では単結晶成長用としてのInPの合成が高圧水平ブリッジマン法で行われている。
ほとんどの化合物半導体は揮発成分を含んでいるため、常圧の不活性ガス雰囲気下では融液組成を保つことが困難である。揮発成分の融液からの離散を防ぐ方法として従来から、高圧の不活性ガスを用いる方法と蒸発成分の平衡蒸気圧を加える方法が取られてきた。ZnSやGaPの成長では前者の方法が取られており、原料を収容した蓋つきの容器を垂直方向に温度勾配のある高圧炉で加熱して融液にし、容器を下方(低温部)に移動することにより容器下部から順次結晶化させている。容器に小穴のある蓋をつけることにより蒸発成分の炉内への飛散を防ぐとともに、容器内の圧力と炉内の圧力に差圧が生じないよう(爆発しないよう)にしている(詳細は「タンマン法」の項参照)。容器内の不活性ガスは蒸発成分の実効的解離圧を低下させている。一方、InPの合成の場合は後者の方法が取られている。工業的に使用されているInP単結晶は主に引き上げ法で成長されているが、融点(1,060~1,070℃)での解離圧が27~35atmと非常に高いため、引き上げ炉内で合成するには危険(圧力が高いとともに、蒸発したリンは炉内低温部に自然発火性の黄リンとなって蓄積する)を伴う。そこで、図1に示すような3ゾーンで構成された高圧水平ブリッジマン炉を用いて(図には高圧容器内部のみ示す)合成された多結晶を原料としている。合成の手順は、まず最初に、舟型をした容器に収容された高純度Inと赤リンを石英アンプルに真空封止し、炉内に設置する。次に、3ゾーンをおのおの加熱して図のような温度分布にすると、In融液(融点:156.6℃)に約500℃の赤リンから解離したP₄ガス(10~20atm)が相図に従って平衡濃度まで溶け込む。この時アンプル内の圧力は赤リン部の最低温度によって決定され、それは1atmを超えるので、アンプルが破裂しないように炉内の圧力(最終的には20~25atm)を制御しなければらない。最高温度(約1,000℃)部分のIn融液にはIn:P=50~55:50~45のPが溶け込んでいる。最後に、この状態でアンプルを右方向に移動すると容器の右端からInPの多結晶が析出する。容器の材質としては石英が用いられていたが、シリコンの汚染により、合成結晶のキャリア濃度は10¹⁶cm⁻³程度であった。近年、pBN(pyrolitic:熱分解BN)製の容器の使用によりキャリア濃度は1桁程度減少している。なお、この合成方法はIn:P=50:50のInP融液からInP結晶を成長させているわけではないが、水平ブリッジマン法とは炉内温度分布、容器の移動、(水平)一方向凝固という点で類似しており、さらにIn融液中のP濃度がInPに近いため、高圧(水平)ブリッジマン法に分類されている。

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