半導体用語集

濃度勾配法

英語表記:temperature gradient method

 濃度勾配法は溶液法の一種で、温度差法あるいは温度勾配法ともいい、その基本的原理は溶液内に温度分布をつけ、高温部(溶解度の温度係数が正の場合)に原料(溶質)を置いて溶解し、低温部に溶解度差分の溶質を析出させることである。高温部で高濃度の溶質を溶解した溶液は、比重差や濃度勾配拡散・対流などによって低温部に移動させられ、析出後高温部に戻されて再度原料を溶解する工程を循環する。この方法では同じ溶液法である溶媒蒸発法や温度降下法とは異なり原料(溶質)を溶液へ追加できるため、少ない溶液から大きな結晶を作成できる。また、析出した溶質(原料)量が原料から常時追加されるので結晶周囲の溶質濃度は一定に保たれるという意味ではゾーンレベリング(「ゾーンメルティング法」の項参照)になっており、非調和融解物質の均一組成結晶成長には不可欠の成長法となっている。非調和融解する三元化合物半導体 HgCdTeの成長法であるTZ法や、同じく非調和融解する酸化物結晶(たとえば、イットリウム鉄ガーネット; YIG)の成長法であるTSFZ法はいずれも融液成長法として「ゾーンメルティング法」の項で紹介しているが、これらはむしろ(溶液)濃度勾配法といえる。
 濃度勾配法を実現する最も単純な方法は、るつぼ内の溶媒に溶質を浮かベ、上部を高温にしてこれを溶解し、下部の低温部に析出させる方法(一槽式)である。この方法は溶質が溶液より軽く、高濃度溶液ほど重たい場合に適用できる。この方法によりPbCl₂(比重5.85)を溶媒としてZnS(比重 4.1)の単結晶成長が行われた。 GaAsの成長も可能である。少ない溶液で大型結晶を簡単にえることができるので多くの工業用水溶性結晶がこの方法で作られている。一定条件で成長させるためには、溶解速度、成長速度、溶質移動速度を個別に制御してバランスさせる必要があり、原料溶解槽、(循環用撹拌槽)、成長槽のように 2槽式(この場合、熱対流を利用して撹拌・循環する)、3槽式としたさらに複雑な成長法も考案・実用化されている。

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