半導体用語集
アクセプタ準位
英語表記:acceptor level
禁制帯中に作られる局在した電子エネルギー状態の中で,電子に占有された状態で負に帯電し,電子を放出した状態で電気的に中性となるものを,アクセプタ準位と呼んでいる。正孔を放出して負の荷電状態をとり,捕獲した時に電気的に中性になると読み換えてもよい。ドーパントとしてのアクセプタ不純物は,p型領域を形成する時に用いられる。この場合には,正孔の束縛エネルギーが室温の熱エネルギー(約25meV)と同程度かそれよりも小さい,いわゆる浅い不純物準位である必要がある。
不純物原子の原子価が,置換すべき母体原子の原子価より小さい場合にはアクセプタになる。化合物半導体では,母体を構成する原子が2種類以上あるため,格子位置を占めて(置換型)アクセプタとなる可能性のある不純物原子の種類は多様である。たとえば,ヒ化ガリウム(GaAs)においては,Ⅱ族元素(ZnやBeなど)がカチオン原子(Ⅲ族のGa)を置換する場合と,Ⅳ族元素(Cなど)がアニオン(Ⅴ族のAs)格子位置に入ってアクセプタになる場合とがある。
アクセプタ不純物の高濃度ドーピングは,へテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)のべース領域形成における重要な課題である。現在,Ⅲ-Ⅴ系のHBTでは,有機金属気相成長において炭素を10²⁰~10²¹cm⁻³オーダまでドーピングすることが可能である。一方,青色発光材料として注目されているⅢ族窒化物系では,長い間,低抵抗のp型結晶をえることな困難であったが,マグネシウムの採用と結晶成長後の活性化技術の開発により突破口が開かれた。しかし,アクセプタ準位が深く,依然として水素不活性化の問題が残っているなど,さらなる低抵抗化にはまだ多くの課題が残されている。
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