半導体用語集
サブオキサイド
英語表記:sub-oxide
酸化は常に界面あるいはその近傍で起こっているので、界面では酸素不足になりやすい。また、界面でのシリコンとシリコン酸化膜との格子不整合性から、シリコン酸化膜側には面内では強い圧縮応力がかかっている。結果として、界面付近のシリコン酸化膜側に構造的な無理を強いることになり、結合・反応が不十分のままになってしまい、シリコンが酸素と十分反応せずに一部シリコンと結合したまま残ってしまうことは想像される。シリコンと酸素4個が結合したものを、シリコン酸化膜中の最も合理的な結合状態であるとして、それをSi⁴⁺と呼ぶ。4個の結合のうち1個はシリコンと結合を組んだままであるのが、Si³⁺、順にSi²⁺, Si¹⁺とシリコンとの結合が増える。これをサブオキサイドといい、ここには、Si⁴⁺以外のSiⁿ⁺の状態の酸化膜が多く存在する。光電子分光法 (XPS)によってこの部分を観測すると、それぞれ(n=l∼4)の結合状態の違いを反映して、Si原子のコアレベルのエネルギーレベルがわずかにシフトする。これをケミカルシフトと呼び、その違いを観測することで逆に結合状態の差を知ることができる。このケミカルシフトの振幅を通して、どのサブオキサイドがどの程度存在するかを確かめることができる。サブオキサイドの性質を調べることは酸化膜形成機構にも関係しており、酸化膜研究の一つの有力な手段になっている。界面での結合の変化であるから、実験的には基板面方位にも敏感である。注意すべきは、原子レベルで急峻に変化していたとしても界面の一層のSiに対しては、バルク中SiあるいはSiO₂中Siとは異なり、バルクSiとバルク SiO₂の両方に属することから生じるケミカルシフトを引き起こす。角度分解XPS(入射X線の角度を変えながら実効的に観測している深さを変えながらXPS測定を行う)の結果に基づいてサブオキサイドはほぼ界面に局在していると予測されており、不安定な構造、歪などの影響によって酸化膜の信頼性劣化にも関係していると考えられている。一方、界面付近には、構造遷移層と呼ばれる層が存在することが、ESR、X線反射、IR吸収スペクトル、エッチングレートなどの実験から報告されている。これは界面にバルクとは異なる性質の層が存在することを示す時に用いられるが、これが結合状態が異なるという意味のサブオキサイドと等価というわけではなく、ネットワーク構造がバルクと異なることを含めて使われる。
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