半導体用語集
自然酸化膜
英語表記:native oxide
Siを大気中に放置しておくと、表面に自然酸化膜と呼ばれる1nm程度の酸化膜が生じる。Si基板を洗浄する際に、薬品や、水中の溶在酸素との反応によって形成される酸化膜も自然酸化膜と呼ばれている。自然酸化膜中には水素結合や、 Siの隣の原子が酸素でないsuboxide (サブオキサイド) と呼ばれる結合を多く含むために、密度は熱酸化膜よりも1割程度低い。
Si表面がむき出しのまま大気に曝されると、有機物質やバーティクルが付着しやすいので、Si基板を放置する必要のある場合には、Si表面を自然酸化膜で覆っておく必要がある。自然酸化膜に覆われたSi表面は比較的安定であり、自然酸化膜上に付着した汚染物質は、HF系の薬品で自然酸化膜とともに容易に除去される。ゲート絶縁膜形成の際には、通常自然酸化膜を残したままSi基板の熱酸化が行われる。酸化は自然酸化膜とSi基板との界面からSi基板側に進行するので、えられた熱酸化膜の上層に自然酸化膜は残る。ゲート酸化膜が薄膜化してくると(4nm以下)、自然酸化膜のゲート絶縁膜全体における相対的な割合が増加するので、自然酸化膜の存在が熱酸化膜の成長速度やゲート絶縁膜の電気的特性に影響を及ぼすようになる。自然酸化膜をHFで完全に除去して水素終端した後に、Si表面に汚染物質が付着しないように細心の注意を払いつつ酸化炉に搬送し、熱酸化膜を形成する試みがなされている。
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