半導体用語集

プラズマドーピング

英語表記:plasma doping

物質を固体表面近傍に導入するにあたり、プラズマ状態で行うもの。あらゆる物質の表面物性改質に用いることができ、しかも立体形状を有した固体に適用できる。シリコン半導体の場合は不純物の導入に用いるが、浅い接合を形成するにあたって不純物、特にホウ素を超低エネルギー(1keV以下)で大量にえることは非常に難しくなってきた(「低エネルギーイオン注入」の項参照)。この超低エネルギードーピングの量産 要望に応える技術がプラズマドーピングである。そもそも「イオン注入」という技術を半導体産業に応用しようとする特許には、このプラズマドーピン グ方法に似た手法が記載されている。1954年のことである。その後、イオン注入はチャネル不純物の制御など、比較的高いエネルギー(100keV前後)で用いられてきたため、加速器がスケールダウンした形のコッククロフト型の機器が用いられてきた。一般的にイオン注入機はプラズマ源、質量分析器、加速管、エンドステーションの四つで成り立っている。プラズマドーピングはこのうちのプラズマ源とエンドステーションを合体したようなもの、もしくはプラズマ源の中にシリコンウェハを導入したものといえる。最も初期に考案され、かつ現在はSIAロードマップにも採用されている、古くて新しい技術である。特徴は 「超低エネルギー」「大電流」「低床面積」 「装置部品点数が少ない」「低消費電力」「スループットがウェハ面積に依存しない」「室温でフォ トレジストをマスクに使用できる」など、Cost of Ownership (C00) を非常に低くすることが可能で、極限まで微細化されたデバイスに対しても非常に安価な手法を提供できる。超低エネルギーになれば、 高いエネルギーをえるための特別な工夫は不要になるので、C00が激減する。また、最近は多くの超LSIメーカーが、微細デバイスを試作したところ、プラズマドーピングを用いると、10%前後の性能向上が見込めることが明らかになってきた。単純なメカニズムはプラズマと固体の間に発生する電位差でプラズマ中のイオンが注入されるわけであるが、同時にプラズマ中に存在するラジカルやガスの成分が固体表面に吸着する。吸着した不純物はイオンでノックオンされる。プラズマ中の電子などで固体中の不純物が少し拡散するなど、複雑な過程の重なりである。この技術は低エネルギーを活かして浅い接合を形成する他に、トレンチ側壁、HSGなど、立体的な形状にも適用できるし、液晶TFTなどへ大量の不純物を導入するにも非常に向いている技術である。ところで、プラズマドーピングの心配事としては、現時点に至っては 「ドーズカウントが正確にできるか?」 という一点である。この点に関しても、1999年に装置メーカーや大学からドーズカウントに関する詳しい開発の発表がなされていて、非常に早期に解決するものと思われる。また、極低エネルギーに用いる場合には単にイオンビームを計数しても、ほとんど意味がない (「低エネルギーイオン注入」 の項参照)。
実際の方法について、プラズマドーピングが目指している究極の応用は500~200eV程度の超低エネルギー領域で30nm以下の極浅い接合を形成することである。そのためにはプラズマとシリコンウェハ間に1 keV以下の電位差が生じるようなプラズマ状態を形成してやればよい。たとえば、
B2H6というガスを用いてホウ素をドーピングするには、安全性のために Heや水素で希釈して数%にして導入する。プロセス中の真空度はシース中での衝突を避けてエネルギーの低下を避けるために1mTorr前後で行うことが望ましい。これ以下の真空度では衝突による低エネルギー化で、シリコン表面へのデポジションやクラスタリングが発生する。また、イオン密度の急激な上昇でフォトレジストか熱的に損傷を受ける場合があるので、注意が必要である。プロセス時間は10秒程度が典型的である。もちろんこれ以上に速くすることは可能である。現在入手できるプラズマドーピング装置には2基または4基のロードロック装置がついていて、 トータルのスループットを維持するように工夫されている。ま た、n型不純物とp型不純物の打ち分けもクロスコンタミネーションを考慮して工夫する必要がある。本手法は超低エネルギーで高効率の不純物ドーピングを実現し,超徴細化されたデバイスを安価に製造する方法を提供するものである。高度な要求に対してCOOを激減して対応するという試みは、無駄なエネルギー消費をしないという観点で地球環境上も望ましい方向である。


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