半導体用語集

ホットキャリア

英語表記:hot carrier

 熱平衡状態からずれた高いエネルギーを持つキャリアのことをいう。半導体デバイスの寸法が小さくなるにつれ局所的な電界が大きくなり、動作時のホットキャリアの重要性が増大している。ホットキャリアと呼ばれるものには、(1)高電界で加速された電子が散乱を繰り返し統計分布に従う場合の Te>T(Te:電子温度、T:格子温度(平衡状態ではTe=T))で、広いエネルギー範囲にMaxwell分布するキャリアの高エネルギーの裾部分を意味する場合と、(2)ヘテロ構造でバリア層から注入されたキャリアのように、キャリアが取得したエネルギー値付近に狭いエネルギー分布を有するバリスティック的なホットキャリアを意味する場合がある。ホットキャリアの生成はエネルギーの高いキャリアがバリア層や界面のトラップに飛び込む機会を増大し、デバイス特性のドリフト、劣化の原因になるが、逆にホットキャリアの特性を活かしたデバイスも提案されている。(1)のタイプのホットキャリアを利用したデバイスとして実空間遷移デバイス([実空間遷移」の項参照)があり、(2)のタイプのホットキャリアを利用したものにホットエレクトロントランジスタ (HET) がある。このトランジスタはベースのバイアスを変えることにより、ホットな電子の注入を制御することで利得をえるものである。通常のnpnバイポーラトランジスタでは、主キャリアが電子で正孔で電子の注入を制御して利得をえているのに対し、ホットエレクトロントランジスタでは、主キャリアはホットな電子で熱平衡状態のベース中の電子によりホットな電子の注入を制御して利得をえている。したがって、2種類のキャリアが混合しないために、ホットキャリアがベースで緩和せずにホットなままベースを通り抜けることが肝要になる。ホットトランジスタの代表的な構造として、n-AlGaAs/n-GaAs/AlGaAsヘテロ構造があり、将来の高速デバイスの候補として注目されている。

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