半導体用語集
Si窒化
英語表記:Silicon nitridation
トランジスタを高性能化するためのーつの手段として、ゲート酸化膜の薄膜化があり、学会レベルでは直接トンネリングが起こってしまうような1.5nmの極薄ゲート酸化膜を用いた高駆動トランジスタの動作が報告されている。しかし、デュアルゲートにおけるゲート酸化膜の薄膜化は、p+ポリシリコンゲートからチャネル領域へのボロンの突き抜けやホットキャリア劣化を顕在化する。微細化した上でのホットキャリア寿命、ゲート耐圧の確保、ボロンの突き抜け抑制を図るにはゲート窒化膜化が効果的である。
Siの熱窒化反応には窒素、アンモニア、ヒドラジンなどが用いられ、その順に反応は活発になる。安定状態としてSi3N4ができる。Si3N4結晶は SiN4四面体が規則正しく積み重なったものであるが、Si-N結合の化学親和力はSi-0より小さいので、窒化は酸素の影響を受けやすく、現実的には窒化酸化系として扱ったほうがよい。たとえば、1,300℃、1気圧の窒素中でSiを熱窒化する場合、酸素分圧が10-21気圧以下ではSi3N4になるが、10-21から10-17気圧ではSi2N02が、10-17気圧以上ではSi02がそれぞれ平衡状態として存在する。Si窒化膜は酸化膜より密度が高く、窒化種の拡散 はきわめて遅く、ごく初期の窒化反応過程を除いては拡散による物質移動が窒化の進行を支配する。Siの窒化は、始めに直線式、次に放物線式、その次 に対数式に従う。通常用いられるバッチ処理型のSi 窒化装置は、Si酸化装置と同じような石英反応管の拡散炉である。自然酸化膜を除去するとともに、 Si基板を窒化炉に挿入する時、空気の巻き込みを避けることが重要である。このため、ロードロック式の枚葉装置も用いられる。窒素によるSi窒化では, 特に残留酸素や水分の影響を受け, 成長膜は不均一に多結晶化したものとなりやすい。窒素中の酸素や水分を0.1 ppm以下にした条件のもとで1, 200℃以上の温度で非晶質の均一膜がえられるが30%以上酸素が混入しておりSi窒化酸化膜と呼んだ方が適当である。この場合も、長時間窒化では無数の斑点が発生し、やがてそれらを核として結晶化が進行する。反応ガスとして純化アンモニアを用いれば反応は活発になり、相対的に酸化の影響は低減できる。アンモニア中の残留水分を10ppm以下にすれば、酸素混入量が30%以下の非品質膜が窒素を用いた時より100℃以上低い温度で成長できる。1,200℃の基板温度でも3時間の窒化でわずか5nm程度の膜厚に制限される。これはSi窒化膜が緻密で窒化種の拡散がきわめて遅いためであり、このように薄い膜を大面積に均一に成長できる特徴がある。
Si熱窒化膜は酸素の混入があると屈折率はSi3N4の理論値の2.05より小さく、酸素混入量によって1.9から1.7に分布する。比誘電率もそれに伴い6から5程度になる。Si熱窒化膜はアルカリ金属や各種不純物拡散に対する阻止力が強いため、酸化膜にくらべて誘電率が大きいことに加えて、ゲ ート電極からの不純物突き抜け防止の ゲート絶縁膜として有用である。メタルゲートとの反応防止機能も期待できる。さらに、高温酸化雰囲気における酸化防止機能もある。Si窒化膜も酸化雰囲気で徐々に酸化されるが、その酸化速度はSiの1/40程度である。 Si基板と窒化膜の界面は急で遷移層としては1nm以下であり、酸化膜より小さいといわれている。界面準 位密度はSi禁制帯中央付近で 1010cm-2eV-l程度であり、酸化膜の値と同程度である。絶縁破壊の最大電界強度は9MV/cmで、破壊に至る電流密度は酸化膜よりはるかに大きい。流れる電流は高電圧領域ではFowler-Nordheimトンネル電流、低電圧領域ではPoole-Frenkelである。
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