半導体用語集
ラマン分光
英語表記:Raman spectroscopy
物質に入射した光は、そのエネルギーが物質の遷移エネルギーに等しくない光を入射した場合においても、量子力学におけるエネルギーと時間の不確定性から、ごく短時間においては物質の遷移を引き起こし一時的に吸収され、再び光を放出する。光散乱はこのような二光子プロセスとみなされ、物質の不均一性により様々な光を放出する。このような散乱光のうち、非弾性的に散乱されて励起光のエネルギーとは異なるエネルギーで放出される成分は、ラマン散乱と呼ばれる。このラマン散乱光を分光することにより、半導体結晶の場合は主として格子振動に関する情報がえられる。
ラマン分光のスペクトルは、散乱光の強度を入射光のエネルギーと散乱光のエネルギーの差に対する散乱強度の変化として表わされる。半導体中のラマン散乱は格子振動によって引き起こされる。散乱強度は結晶の対称性により決定され、偏光と散乱配置によって変化する。散乱強度の散乱配置依存性から物質のラマン活性格子振動モードを同定することが可能であり、結晶構造や組成に関して情報がえられる。さらに散乱エネルギーの変化から、ひずみや不純物の振る舞いを評価することができる。
半導体におけるラマン散乱は、入射光の弾性散乱強度よりも5桁程度弱く、検出器は微弱光検出用のものが要求される。またバックグラウンドとなる迷光を抑えるためにダブル分光器を一般的に用いる。入射光には単色性の良いレーザが用いられる。ガスレーザを用いる場合はプリズムなどで輝線を取り除く必要がある。チタンサファイアレーザなどの波長可変レーザを用いることでラマン励起分光、すなわち共鳴ラマン散乱の測定が可能となる。レーザのエネルギーを物質の遷移エネルギーに共嗚させることにより、ラマン散乱の散乱断面積は増大する。微弱なラマン散乱を観測する手段として、この共鳴ラマンを測定する方法は有効である。さらに共嗚ラマンスペクトルは実励起に対応しているため、電子、励起子などの遷移現象および格子振動との相互作用に関する知見を与える。
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