半導体用語集

レギュレータ

英語表記:regulator

 A/D,D/A変換器などでは基準となる電圧が必要となる。通常は外部から供給されていたが,最近は集積化の要求は高まっている。また,デジタル回路の消費電力はスイッチングされる容量をC,電圧をV,スイッチング回数をfとすると,CV²fで表わされ,電圧を下げることは2乗で消費電力の削減になるので,できる限り低電圧で動作させたくなる。そこで,一定の電圧を出力するレギュレータが必要となる。基準となる電圧はバンドギャップリファレンス回路や,2種類のしきい値電圧を持つMOSトランジスタを利用した基準電圧回路で発生させる。基準電圧は一定電圧を出力するだけであるので,所望の電圧に調整して電流駆動能力を高めるために強力な緩衝増幅器が必要となる。同時に出力が短絡された時には電流を制限する仕掛けが必要となる。また,パイポーラ集積回路では温度が上昇すると熱暴走と呼ばれる制御できない状態に陥ることがあるので,これを防ぐ仕掛けも必要となる。この用途の増幅回路はレギュレータと呼ばれる。しかしMOS集積回路では,温度が上昇するとトランジスタの相互コンダクタンスは減少して熱暴走することはないので,考慮しないのが普通である。また,集積回路内だけに電源を供給するのであれば,短絡保護も必要なくなる。短絡保護回路は出力 に抵抗を付加してそこでの電圧降下が一定以上になった時出力を止めるように回路を構成するのが普通で,出力インピーダンスを高くすると同時に,ここで電圧降下を生じ,効率の低下が避けられないので,用いないのが普通である。その結果,電圧レギュレータ回路は,負荷が大きく変化しても位相余裕が大きくて負荷駆動能力の大きい一種の演算増幅回路と同じである。電源電圧変動や負荷変動があっても一定電圧をえる仕掛けにおいて,変動に応して負荷と直列に接続した素子での電圧降下を制御することで,一定電圧をえる仕掛けにしたものはシリーズレギュレータと呼ばれる。入出力電圧差が大きいほど効率は悪いが,雑音は比較的小さくできて,アナログ回路に電圧を供給する目的で用いられる。
負荷に流れる電流が増加した時には消費電流を減らし,減少した時には増やすことにより電圧変動を押さえる方法をシャントレギュレータと呼ぶ。シャントレギュレータは主として出力電流の大きなシリーズレギュレータの基準電圧発生回路として用いられる。抵抗を直列に接続したツェナダイオードはシャントレギュレータの典型であるが,集積回路に構成するためには付加プロセスを要するため用いられることは少ない。
これらに対し,スイッチングレギュレータは電力供給源から負荷への電力供給を間欠的に供給することにより平均電力を所望の値に保つようにフィードバックをかける。出力電圧の制御は電力を供給するスイッチがオンしている時間を変化させることにより定電圧出力動作を行う。駆動制御がトランジスタを用いたスイッチング回路を用いるためこの名前がついた。
前2者のレギュレータは電圧降下を 起こさせる素子が抵抗性であるので,この抵抗による電圧降下に相当する電力を消費させることで制御するのに対し,スイッチングレギュレタは駆動パルスのデューティ比によって制御し,電流を平滑化させるために接続されるインダクタで電圧を分圧するので,損失が少なく,デジタル回路の電源として広く用いられている。しかし,スイッチングを伴うので,リップル電圧が避けられないため,アナログ回路の電源としてはあまり望ましいものではない。


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