半導体用語集

両面研磨

英語表記:double side polishing

両面研磨はその名称のとおり、シリコンウェハの表面、裏面ともに鏡面研磨する方式である。国際的な半導体設備・材料業界団体であるSEMIおよび日本の業界団体である日本電子工業振興協会(JEIDA)の標準規格では、直径200mm以下のウェハは片面鏡面、直径300mmウェハは両面鏡面の仕様になっているため、将来的には両面鏡面ウェハが増えてゆくものと思われる。片面鏡面ウェハの鏡面研磨には片面研磨装置を用いるが、両面鏡面ウェハを作成する場合は片面研磨装置で表面、裏面をそれぞれ研磨する方式と、ラップ装置と同様の構造の両面研磨装置で両面を一度に研磨する方式がある。両面研磨ウェハが指向される理由は、基本的にはウェハの平坦度向上に関わるものである。一つ目の理由は加工技術的要因である。両面鏡面ウェハの作製に両面研磨装置を使用する場合、その機械的構造と研磨の仕組みから片面研磨装置を使用する場合にくらべて平坦度の良好なウェハを作りやすい。いま一つの理由はLSI製造工程中でのウェハの扱いと検査に関わる要因である。シリコンウェハにLSIの回路を焼きつける際は、アライナという露光装置(普通の写真での印画紙焼きつけに使う引伸機の超高性能版と思えばよい)を用いて、写真焼きつけとまったく同様の仕組みで回路を焼きつける。この時にウェハの表面がアライナの焦点面に対して完全に一致する、すなわち平坦であることが重要である。しかし、ウェハをアライナにセットするということは、実際にはアライナのステージにウェハを置くことである。アライナは今日では1μm以下の回路を焼きつけるので、たとえばウェハが理想的に平坦であっても、ステージとウェハの間にわずか1μm以下のごみでも挟まってしまえば、ウェハ表面は簡単にアライナの焦点深度から外れてしまい、ピンぼけの回路しか焼きつけられなくなってしまう。つまり、たとえウェハの裏面であっても、パーティクルなどが付着していては具合が悪いということになり、ここで裏面が鏡面研磨されていることが重要になる。パーティクルなどの付着のしやすさ自体は、鏡面研磨面であってもエッチング仕上げ面であっても変わらないが、1μm以下のパーティクルが対象となると、鏡面研磨面である方が圧倒的に「パーティクルがついていることをみつけやすい」のである。このように両面鏡面研磨ウェハは、平坦度に影響を与えるいくつかの要素で有利な面があり、このことが両面鏡面ウェハに移行するドライビングフォースとなっている。しかしながら、現実の運用ではいろいろな問題が生じてくることも指摘しておきたい。第一に、両面鏡面研磨ウェハといえども表面と裏面があり、仕上げ状態が微妙に異なるのであるが、普通の作業者の目ではほとんど見分けがつかないということである。このことは人間が裏表を間違えて扱うというトラブルを引き起こす。次に、鏡面加工したシリコンウェハの面は、それ以降いかなる物で触れてもその痕跡が残るということである。ウェハは鏡面加工した後に平坦度を測定し、付着しているパーティクルの数と大きさが一定 の規格以下であることをやはり測定器 で確認する。ところがこれらの測定器 はほとんどの場合ステージにウェハを置く必要があり、結果としてステージと裏面が接触するのでウェハの裏面にステージに載った痕跡が残ってしまうことになる。シリコンウェハのユーザーであるLSIメーカーは今のところ、「何かみえたらすべて規格不合格」という立場なので、「ウェハメーカーが規格に合格しているかどうかの検査をしたウェハはLSIメーカーの受入検査基準を満たさない」という矛盾した状態に結果としてなってしまうわけである。こういった矛盾についてはユー ザー・ベンダー間、業界団体などで議論が行われており、今後徐々に解決してゆくと考えられる。


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