半導体用語集

捕獲中心

英語表記:trapping center

 酸化膜に電子線や放射線を照射した場合、あるいはMOS構造において電界をかけてキャリアを注入した場合に、MOSキャパシタのフラットバンド電圧がシフトすることが観測される。これは、酸化膜中にキャリアが捕獲(trap)されたことを意味しており、その捕獲の実体を捕獲中心という。正孔がトラップされるとC-V特性は、ゲート電圧に対して負の方向にシフトし、電子がトラップされると正の方向にシフトする。トラップされやすさを表わす指標として捕獲断面積 σ(cm²)という量がよく用いられる。およそ次のような分類がなされる。σ=10⁻¹²∼10⁻¹⁴cm²(Coulombic attractive)、10⁻¹⁴∼10⁻¹⁸cm²(neutral)、10⁻¹⁸∼10⁻²¹cm²(Coulombic repulsive)。                    これらの性質は電界によっても変化する。電子にくらべて正孔はトラップされやすく、捕獲断面積は大きい。電子トラップにしても正孔トラップにしても、酸化膜が形成された時にすでに存在するトラップと、キャリア注入などによって新たに作成されたトラップがある。この区別は素子の劣化を議論する時には重要である。酸化膜を形成した直後から存在するトラップとしては以下のものが考えられている。電子トラップとしては水に関連したトラップであり、実際いわゆるウェット酸化膜 (酸化雰囲気にH₂Oを含ませて作成された酸化膜) では電子トラップが多いことがわかっている。構造的には酸化膜中のSi-OH構造が電子トラップとして働いていると考えられている。正孔トラップとしてはSi/SiO₂界面近くに存在することがわかっている。ドライ酸化膜では正孔トラップが多いと報告されており、構造的起源としては酸素欠損結合=Si-Si=は正孔トラップとして働くと考えられている。ここに正孔がトラップされることで、(=Si・+Si⁺=) と分解し、第二項は固定正電荷となり第一項はESRで観測されるところのE'センターとして観測される。また、(=Si-O-Si=)に放射線あるいは高エネルギーの電子からエネルギーが与えられることによって、(=Si-O·+Si=) となり、第一項はノンブリッジング酸素と呼ばれ正孔トラップとなる。特に、(=Si-O-Si=) が歪んでいる時には低いエネルギーで上記の分解が起こりやすい。キャリア注入によって生ずる電子トラップを調べる時には、二段階の方法で調べる。
まずFowler-Nordheim電流を酸化膜中に注入して電子トラップを発生させて、それに続いてアバランシェ注入を行って電子の発生量を調べる方法が取られる。このような実験で、電子トラップと同時に正孔の捕獲も観測され、捕獲正孔密度と電子トラップ密度とが対応していることが報告されており、電子と正孔のトラップの間の関係にはかなり複雑にからみあっていることが予測される。また捕獲中心は、デバイス作成過程における、スパッタリング、EB蒸着、プラズマエッチング、EB·X線リソグラフィ、イオン注入などの各プロセス工程でも形成される。それぞれの機構は、汚染の場合、結合に影響を与える場合など様々だが考慮しておく必要がある。

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