半導体用語集

省エネルギー化

英語表記:energy saving program

 先進諸国を中心に地球温暖化、オゾン層破壊など環境汚染が深刻化している。さらに開発途上国においても経済成長に伴う消費文明の浸透により、近い将来にエネルギーの大量消費が予測され、現在われわれは全地球レベルでの省エネルギー対策にせまられている。
 家電・照明機器に関する省エネルギ一対策として、国により差はあるが、以下のような対策が取られ、あるいは今後取られると考えられている。
(1)機器の低消費電力設計
 電子機器の低消費電力設計についてはシステム、使用半導体の特性改善の両面からアプローチが行われている。システムについては、機器の各動作モードによって各ブロック、回路への電力供給をこまめにon・off制御するなどの処置が取られている。
 また、使用半導体についてはロジックLSIとパワー素子では違うアプローチが取られる。すなわちロジックLSIにおいてはその消費電力が電源電圧の2乗、スイッチング回数に比例し、また回路内部素子のドライブ能力と必要速度の最適化に関係しているところから、電源電圧を下げるプロセスの開発、不要なスイッチングを避ける各種手法や最適素子サイズなどをEDA(Electronic Design Automa­tion)によって設計するなどの処置が取られている。
 また、パワー素子については低飽和電圧化による順方向損失削減と素子の高速化によるスイッチング損失低減化が課題となっている。
(2)電力の総量規制
 機器の低消費電力化を促すため、各メーカーごとにこれまでの実績から総消費電力を割り当て、その範囲内に総生産台数を規制するもの。メーカー側で生産台数を増やすためには、その機器の消費電力を下げる必要がある。
(3)オゾン層を破壊するフロンの使用禁止
 冷蔵庫、エアコンのコンプレッサに利用されている一部フロンの使用禁止。メーカー側では材料変更が必要となるが、冷却能力低下問題からインバータ化の進展が促進される。
(4)力率の改善
 通常用いられるコンデンサインプット型整流、平滑回路により、商用周波数電源のピーク部分のみ電流が流れる現象(無効電力の増加、力率低下)により変電所、送電ラインでの安定運転に支障が出ている。新たな公害として認められたこの問題の改善対策として、電子機器の力率改善対策が必要となっている。そのため、特に欧州地区において強い法的規制が行われており大電力電子機器、大型照明装置を中心に力率改善、すなわち入力商用AC電源の入力電流電流導通角の拡大(全時間範囲での電流流通)が要求されている。今後は家庭用電子・照明機器においても同様の規制が予想される。
 力率改善専用ICも開発されており、それらの利用による対策が行われている。
(5)待機電力の削減
 各家庭用電子機器へのタイマ、リモコンの採用など、機器を利用していない時における電子機器の消費電力(待機電力)が、たとえば日本の場合家庭での全消費電力の10%(1997年)にも達しているといわれ、さらにそれが上昇の傾向にある。特にTV、VTR、FAXなどの総待機電力は稼動台数が多いこともあり問題視されており、地球温暖化防止のための炭酸ガス排出量規制もあって、日本においてはトップランナ方式により規制される方向である。
 その対策方法としては待機用として常時動作が必要な回路用の電源(タイマやリモコン用電源)として入力AC電源を間欠動作させる、二次電池(あるいは大容量コンデンサ)の利用などが考えられている。
(6)各種政策のトップランナ方式の採用
 電気機器の消費電力、待機電力対策など各メーカーの技術開発競争を促す目的で、最良の特性を出したメーカー(トップランナ)製品を基準としてその後の規制値を決める方式、すなわちトップランナ方式が採用される。本方式の採用により、メーカー間の特性改善競争が加速されることとなる。

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