半導体用語集
磁気抵抗
英語表記:magnetoresistance
試料に磁場を印加した時に現われる電気抵抗の磁場依存性の総称。磁場の強さに応じて,様々な効果により抵抗の磁場依存性が生じる。以下に,典型的な磁気抵抗の例を紹介する。
(1) B<1kGの低磁場領域:磁場の印加により電子の波動関数に時間反転対称性がなくなり,アンダーソン局在が解けるため,電気抵抗が減少する(負の磁気抵抗効果)。この負の磁気抵抗効果を解析することにより,電子波の位相が保たれたまま伝搬する距離(位相コヒーレンス長)を求めることができる。
(2) B~数kGの領域:電子のサイクロトロン半径が数100nm程度になり,サブミクロンの寸法に加工されたメゾスコピック構造中では,電子のバリスティックな伝導により電気抵抗に構造が現われることがある。
(3) Bく数テスラの領域:電子のサイクロトロン運動によるランダウ量子化が顕著になり,縦磁気抵抗 RxxにShubnikov-de Haas振動と呼ばれる,1/Bで周期的な振動的磁気抵抗が現われる。Shubnikov-de Haas振動の周期からは電子密度が,また振幅からは電子の散乱時間,電子温度,有効質量などの,様々な物理量が決定できる。
(4) B>数テスラの領域:シリコンMOS反転層や変調ドープへテロ構造中の二次元電子系では,量子ホール効果や分数量子ホール効果などの特異な磁気抵抗が観測される。
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