半導体用語集
表面・界面
英語表記:surface and interface
化合物半導体の結晶では,一般にⅢ価とV価の元素(Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体)またはⅡ価とⅥ価の元素(Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体)が規則正しく配列して,互いに化学結合(結合ボンド)を形成している。結晶をある方向で切り出すと結晶の表面が現われる。この表面にさらに物質を形成するとその両者の間に界面が形成される。表面・界面に対して結晶をバルク結晶(または単にバルク)と呼ぶことがある。半導体デバイスなどの工学応用には,バルク結晶としての物性が重要であることはもちろんである。しかし,デバイスの多くは金属・半導体・酸化物などの薄膜を重ねて形成される界面の特性を用いているため,界面と界面形成の基板となる表面が重要となる。また,デバイスの寸法が微細化されるに従い,表面付近の物性がデバイス特性に影響することも多くなる。
物質中の電子のエネルギーは,電子が存在できる領域(許容帯)と存在できない領域(禁制帯)に分けられる。電子の個数は物質により決まっていて,電子はエネルギーの低い許容帯から順に詰まっていくが,許容帯の中で電子が詰まった状態(占有電子状態)と電子が詰まっていない状態(非占有電子状態)の境目のエネルギー(フェルミエネルギー,または,フェルミ準位と呼ぶ)により物質の電気伝導特性が決まる。すなわち,フェルミ準位が許容帯中に存在する物質では,わずかなエネルギーで電子が移動でき,金属のような導体となる。フェルミ準位が禁制帯中に存在する場合には,禁制帯のエネルギー幅(バンドギャップ,または,エネルギーギャップ)が比較的大きい物質は,酸化シリコンやガラスなどのような絶縁体となり,バンドギャップが比較的小さい物質は,中間的な電気伝導性を示す半導体となる。半導体においてフェルミ準位をはさんだ占有電子と非占有電子が存在する許容帯を,それぞれ,価電子帯と伝導帯と呼ぶ。
半導体表面の原子では,結晶を形成していた化学結合が切断されるため,結合を持たない結合ボンド(未結合ボンド,または,ダングリングボンド)が存在する。ダングリングボンドは高いエネルギーを持つため不安定な状態にあり,多くの場合には,ダングリングボンドの個数が減るように表面における原子配列が変化して,エネルギー的に安定化する(表面再構成)。しかし,一般には,一部のダングリングボンドは表面に残される。このダングリングボンドは,バルク結晶の電子状態とは異なるエネルギー位置に存在する電子状態(表面準位)の原因の一つで,半導体表面の吸着・拡散・反応などの過程を支配している場合が多い。シリコンSiやゲルマニウムGeなどの元素半導体においては,ダングリングボンドのエネルギーは理想的には禁制帯の中間に位置するが,化合物半導体では,2種類以上の元素が表面・界面とその付近に存在するため,ダングリングボンドのエネルギーも多様である。たとえば,代表的な化合物半導体であるヒ化ガリウムGaAsの表面にはガリウム原子とヒ素原子のダングリングボンドが存在し,ガリウムのダングリングボンドからヒ素のダングリングボンドへの電荷移動が表面特性に大きな影響を与えている。さらに,化合物半導体では,表面における元素比が必すしもバルク結晶と同じ(たとえば,ヒ化ガリウムではGa:As=1:1)ではなく,さらに多様な表面構造を示す。
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