半導体用語集

表面再結合

英語表記:surface recombination

 半導体の伝導帯と価電子帯中の伝導電子と正孔(ホール)は,通常は,熱力学的に平衡状態の分布関数に従いその個数が決まっている。光励起や電子注入により,伝導帯の電子数や価電子帯の正孔数が熱平衡状態よりも多くなると,ある平均的な時間(寿命(life time))の後に,一対の電子と正孔が消滅してエネルギーを放出し熱平衡状態に戻ろうとする(再結合(recombination))。この時放出されるエネルギーは,再結合した電子と正孔のエネルギー差に等しいが,エネルギーが光に変換される場合を自然放出(Spontaneous Emission;再結合発光)と呼び,その他の場合を非輻射再結合(非発光遷移)と呼ぶ。シリコンやゲルマニウムのような元素半導体のバンド構造では,伝導帯の極小値と価電子帯の極大値を与える波数が異なるため,再結合において格子振動(フォノン(phonon))の助けを借りた運動量の変化を伴う遷移となる。そのため,大部分のエネルギーは格子振動,すなわち熱エネルギーに変換される。
 ヒ化ガリウムGaAsなど,多くの化合物半導体のバンド構造においては,伝導帯の極小値と価電子帯の極大値を与える波数が一致していて(直接遷移型半導体),再結合のエネルギーが光に変換される率が高い。直接遷移型半導体においても,バンドギャップの中央部分に準位が存在する場合には,この準位を介して電子と正孔の再結合が起こり,非発光遷移となる。この時,その準位を非発光中心と呼ぶ。GaAsのバルク結晶中においても,たとえば,転位による欠陥,その他の結晶欠陥,ヒ素がガリウム位置に置換した原子欠陥,銅原子や鉄原子などの不純物などの非発光中心が存在する。
 化合物半導体では,表面(界面)に高密度のダングリングボンドが存在する。理想的にはGaAsの表面付近でバンドベンディングは起こらないはずであるが,実際には,GaAsやGaPなどにおいて,表面欠陥,酸素や他の金属原子の吸着などによりきわめて高い密度の表面準位が,価電子帯最上部からバンドギャップの約1/3のエネルギー位置に存在することが知られている。これらは,表面再結合を誘起する非発光中心となる。半導体レーザの反射面においても,この表面再結合のために再結合速度が上昇し発熱が大きくなり,端面劣化の原因の一つになっている。


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