半導体用語集

再結合ライフタイム

英語表記:recombination lifetime

過剰な少数キャリアの濃度が再結合により1/e に減衰するまでの時間で定義され、tr と表記する。JEIDAなどの標準規格では、光励起による反射マイクロ波法が採用されているが、結晶に固有のライフタイムをバルク再結合ライフタイム(τb)、反射マイクロ波パワーが光パルス照射時の1/e に減衰するまでの時間を1/e ライフタイム(τe)と定義している。注入光子密度を抑制して過剰キャリア密度が多数キャリア密度にくらべ低ければτe~τbと近似できる。指数関数とみなせる減衰部分(一次モード部分)から求めた時定数を一次モードライフタイムτ1 と定義され、表面再結合によるライフタイムをτs と表すと、
  1/τ1=1/τb + τs
の関係がある。したがって表面再結合が小さければτ1~τbとなる。実際の測定ではτ1またはτeが観測されるが、再結合ライフタイムは表面再結合速度S の寄与が大きいため、表面状態に敏感である。そこでSloweringtと称した種々の手法(熱酸化や沃素のエタノール溶液に浸漬するchemical passivation)でS の影響を抑制した測定が行われる。広く普及した手法として反射マイクロ波を用いて光導電減衰により再結合ライフタイムを測定するμ-PCD(μ-wave Photo Conductivity Decay)法がある。原理はシリコン中に過剰キャリアを発生させ、キャリアの再結合による現象を反射マイクロ波により測定し解析するものである。μ-PCD法では非接触の測定が可能で、最近の測定装置では300mmまでの口径のウェハの1mm単位の面内分布測定が普及している。また励起光に複数の波長を選択、注入光子密度の選択などによりn/n+ やp/p+ のエピタキシャル層、SOI層、拡散ウェハの表面層などの薄膜部分の測定への応用もなされている。再結合中心としては、金属不純物、結晶欠陥、照射損傷などが知られている。金属不純物については、Fe、Cu、Niなどの金属を強制的にシリコン中に拡散などにより導入して、不純物濃度とライフタイムとの相関がえられており、FeやNiはDLTSなどの裏づけの下に1010 cm-3 まで検量線が得られている。そこで、シリコンウェハの再結合ライフタイムはプロセス汚染(洗浄、酸化)、バルク結晶部分の金属汚染の評価に幅広く活用されている。しかし実際のプロセスでの汚染種は限定できないため、厳密にはライフタイムから汚染種を特定することは困難である。近年p型ウェハでの、光によるFe-BのFeiへの解離現象を利用して、光照射前後のライフタイム測定値からFe濃度を算出する方法がある。これSPV
(Surface Photo Voltage)法でキャリアの拡散長のFe-B熱解離前後の測定から算出する手法に類似している。照射損傷については、イオン注入、ドライエッチング、アッシングなどのプロセスダメージもライフタイムを低下させる。


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