半導体用語集

超微粒子

英語表記:Ultrafine particles

 物質のサイズを小さくして微粒子にすると,バルクと異なる様々な性質が現われる。これは,粒径を小さくすると表面にある原子の割合が増加し,その結果,全エネルギーに対する表面エネルギーの占める割合が大きくなることに起因する。粒径が20nmの粒子では,含まれる2.5×10⁵個程子のうち約10%が,5nmでは,4×10³個程度の原子のうち実に40%が表面にある。このような効果は,粒径がサブミクロン領域になると顕著になる。このため,μm程度までの粒子を微粒子,それ以下の粒子を超微粒子と区別して呼ぶことが多い。さらに粒径が小さくなると量子効果に起因する様々な現象も現われてくる。わが国では,久保効果と呼ばれる金属微粒子における量子効果が,理論的に指摘されたことが契機となって超微粒子の研究が活発に行われるようになった。
 ところで,このような超微粒子の研究は,バルクから出発するのではなく,原子から出発して,その集団のサイズを大きくすることによりバルクを理解しようとする考え方でも行われている。現在では,数1,000個から1万個程度までの原子集団が,このような研究対象として取り扱えるようになっており,その場合は,クラスタあるいはマイクロクラスタという言葉が用いられる。
 以下に超微粒子で観測される現象の例をあげる。まず,超微粒子の形状は,バルクで安定であった結晶面で取り囲まれるのではなく,表面エネルギーを下げるために,球に近い多面体構 造を取ることが多く,多重双晶を含んだ粒子なども観測されている。また,粒径が小さくなると融点の低下も観測される。たとえばAu微粒子では,粒径が10nm以下になると融点降下が顕著になり,粒径5nmでは,バルクよりも200K程度も融点が降下する。半導体の粒子では,直径が10nm近いサイズになると量子効果が顕著になる。たとえば,Siは間接遷移型であるため,バルクの発光効率は低いが,超微粒子にすると波数の選択則の緩和によって発光強度が上がり,また粒径に依存したブルーシフトが観測される。磁性体では,粒径を小さくすると磁区が一つしか存在しない単磁区粒子がえられる。単磁区粒子では,保磁カや残留磁化の増大などが観測され,磁気記録材料の性能向上に応用されている。低圧ガス中などで蒸発させて作った金属微粒子は,光をよく吸収し,金属黒(metal black)と呼ばれ,優れた黒化物として利用されている。超微粒子を原料として焼結を行うと,その反応性の高さのため,より低温から融着,焼結が起こり,ファインセラミックスという名前で呼ばれる緻密で強度の強いセラミックスが作製できる。また,超微粒子の反応性の高さを触媒やセンサなどへ応用しようという研究もなされている。
 超微粒子の作成法は,大きく気相法と液相法に分けられる。気相法では,アルゴンやヘリウムなどの不活性ガス中で原科を蒸発させ,気相中で原料を急冷凝縮させるガス中蒸発法,原科を気相中で急速に化学反応させる気相反応法がある。液相法では,金属塩溶液などを原料として沈殿により作製する沈殿法,噴霧により溶媒を蒸発させる噴霧法などがある。しかし,気相法は,一般的に粒径などの制御が容易でしかも粒径分布がシャープでかつきれいな外形の清浄な粒子が形成できるという特徴を有しており,中でも特にガス中蒸発法は,量産にも向いていることから最も一般的な超微粒子の作製法となっている。


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