半導体用語集

OBIRCH法

英語表記:OBIRCH method

 レーザビームで加熱した際の配線の温度上昇に伴う抵抗変化を利用する手法である。1993年にNikawaらによりその基本手法が発表された。その後それに基づいた多くの改良やバリエーションが報告されている。この手法により,配線中やビア下のボイドの検出,配線中のSiやCu化合物の析出の検出,配線やビアの高抵抗箇所の検出が可能であるだけでなく,配線に流れるリークまたはショート電流経路の検出も可能である。両者が組み合わされた形で,リークまたはショート経路を追うことで,ショート箇所の検出もできる。
 レーザビームとして近赤外レーザ(通常1.3µmの波長のもの)を用いることで,チップ裏面側からこれらの異常を観測することも可能である。近赤外レーザを用いるもう一つの理由は,Si中で発生するOBIC電流(Optical Beam Induced Current)の発生を防ぐためである。1.2µm以下の波長のレーザを用いると,通常のデバイスではこのOBIC電流がノイズとなり,OBIRCH信号の観測ができない(配線のみで構成されるTEGではOBICは発生しないので問題ない)。このような有益性があるため,近赤外レーザを用いたOBIRCH法を,特にIR-OBIRCH (Infrared OBIRCH)法と呼び区別している。波長の長い近赤外レーザを用いることによる空間分解能の低下は,0BIRCH像と重ね合わせる走査レーザ顕微鏡像に可視レーザを用いることで,回避でき,0.5µm以下の異常箇所識別精度をえている。
 特に,高感度の物理欠陥内在デバイス検出法であるIDDQ法で不良と判定されたデバイスにおいて,IR-OBIR­CH法を用いてリーク電流経路を検出し,さらにその原因となる物理的欠陥まで検出することも可能である。
 簡単に構成と原理を説明する。OBIRCHシステムは被観測領域を加熱するためのレーザビームの発生・走査機構,加熱により変化した抵抗を検出するための「定電圧源と電流変化検出器」または「定電流源と電圧変化検
出器」,およびこれらを制御し像表示する制御・表示系からなる。レーザビームによる照射加熱の結果,照射個所の抵抗⊿Rが変化する。「定電圧(V)印加・電流変化検出」方式の場合,電流変化は,
 ⊿I≒-(⊿R/V)I²
で表わせる。また,「定電流(I)印加・電圧変化検出」方式の場合,電圧変化は,
 ⊿V=I⊿R
で表わせる。
 どちらの方式においても,電流Iの項があることから電流経路が観測できる。また抵抗変化⊿Rは上昇温度に依存することから,熱伝導を妨げるボイドやSi析出が検出できる。⊿Rはまた抵抗の温度係数(TCR)に依存することからTCRが周囲と異なる物質が存在すると検出できる。特に,ビア底部やコンタクト部に高抵抗層ができた場合,その温度係数が負と通常と逆である場合が多いため,コントラストの明・暗の違いとして明確に区別できる。なお,像の明暗の表示は通常,信号強度の増減に対応させて設定されるため,「定電圧印加・電流変化検出」方式と「定電流印加・電圧変化検出」方式では明暗が逆転する。それでは物理現象との対応が取り難いので,抵抗の増・減に対応させて暗・明と表示する方法も取られている。下の例でもその方法により表示している。
 図1に配線底部に存在する約0.1µm以下の微小ボイドを暗コントラストとして検出した例を示す。図1(a)のOBIRCH像で配線の一部に暗コントラストがみえる。そのうちの最も暗い箇所の断面をFIB法で出しSIM像で観測したのが図1(b)である。配線の底部に微小なボイドがみられる。図2(a)ではAl配線に流れる電流リーク経路が暗コントラストとして,その右端部が明コントラストとしてみえる。この明コントラスト部のOBIRCH像を,同時に相前後して取得した共焦点レーザ走査顕微鏡像と重ね合わせて表示したのが図2(b)であり,配線間に明コントラストがみられる。この箇所の断面をFIB法で出しTEM法で観察した結果が図2(c)であり,Al配線間にショート箇所があるのが判明し,EDX分析を行うことで,このショート箇所がTiとOを主成分とする合金であることが判明した。一般に遷移金属を含む合金の抵抗の温度係数は抵抗率と負の相関を持ち,抵抗率が150µΩ·cm程度以上では負の温度係数を持つことが知られている。このショー卜個所にも意図せず,そのような負の温度係数を持つ合金ができたため,明コントラストとして検出できたと考えられる。


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