半導体用語集
MCZ法
英語表記:magnetic field applied Czochralski
融液に磁界を印加することにより融液内の対流を抑制したCZ法をMCZ法と呼んでいる。また、LEC法に適用したものをM-LEC法と呼ぶことがある。CZ法で用いる融液内には、熱対流、結晶およびるつぼ回転による強制対流、表面張力の不均ーによるマランゴニ対流が存在している。これらの対流は融液を撹拌し温度や不純物分布を均ー化すると同時にるつぼと融液の反応にも影響を与えている。また、対流は層流だけでなく乱流成分も多く、成長界面に乱れを生じ、成長速度や不純物、欠陥濃度の変動をもたらしている。電気伝導性の流体に磁界を加えると対流が抑制されることは1950年代にすでに見い出されていたが、結晶成長への本格的応用が検討されたのは1970年代後半、シリコン単結晶中の酸素不純物の制御が問題になってからである。MCZ法、M-LEC法とも技術的にはすでに開発ずみであるが装置が大型、高価であるため、特殊な用途の結晶、たとえばCCDや高耐圧デバイス用シリコン、以外には必ずしも使用されていないのが現状である。
電気伝導性流体に対する磁界の効果はLorentzの力で説明されている。今、対流によって流体の一部が速度vで磁界B内を運動するとv × Bの電界が誘起され、J=σv×Bの電流が流れる。ここでσは電気伝導度である。したがってLorentz力 F=σ(v×B)×Bが流体に働く。この力は流れに直角な磁界成分によって生じ、流れの速度と反対向き、つまり対流を抑制する方向に働いている。力の大きさはσvB²のオーダであり、速度に比例し、磁束密度の2乗に比例する。具体的には、たとえばシリコンでは、σ=1.2×10⁶/Ω・m、v=15 mm/s、B=750 gaussで、F=100N/m³となり、ほぼ対流の駆動力である浮力と等しくなる。融液内に熱電対を挿入して温度分布変動を測定した例では、シリコン、GaAsとも数100ガウスで短周期の温度変動を生じる乱流、全体的温度分布を左右する層流とも顕著に低減している。実用的には1,000~2,500ガウス程度印加されているようである。さて、融液に磁界を加える方法としては、現在三通りが提案されている。最初に検討されたのが水平磁界印加法であり、水平に配置されたポールピースの間にCZ法成長炉が置かれている。水平磁界は融液面内に非対称に印加されるため、対流抑制効果も非対称になると考えられている。最初にシリコンに水平磁界を印加した実験では不規則な不純物濃度変動はなくなったものの、回転周期に同期した規則的な変動がかえって強くなったと報告されており、対流の非対称な抑制により温度分布が非対称になった結果と考えられている。同時に、るつぼ(石英)から溶け込んだ酸素が撹拌されずるつぼ周囲に留まるので結晶中の酸素濃度が従来の20%に減少したことも報告され、これが磁界印加技術開発の端緒となっている。次に検討されたのが垂直磁界印加法である。これは水平磁界の短所である巨大なポールピース、非対称磁界を解決するために開発されたもので、装置的には水冷銅パイプを炉体外周にソレノイドコイル状に巻くだけである。この方法では回転対称な垂直磁界が印加され温度分布も回転対称になることが示されている。しかし、融液表面近傍で面内方向に運動する対流が抑制されてしまうため回転による不純物面内均ー化効果が減少する、上下方向の流れは残留するため溶け込んだ酸素が成長界面に到達し結晶に取り込まれるという短所があり、シリコンやシリコン中の酸素に対してはあまり有効ではないとされている。第三の方法は水平と垂直両方の磁界を印加するカスプ磁界印加法と呼ばれる。カスプ磁界は2個のソレノイドを対向させ、磁界の向きが相手のソレノイドに向くようそれぞれ逆向きの電流を流すことによりえられる。これにより二つのコイルの中間には回転対称な放射状の水平磁界が、コイル内部ではやはり回転対称な垂直磁界が発生する。この方法は水平、垂直磁界両方の利点を持っており、シリコン結晶の成長に適用されている。また、コイル材質として超伝導材質も開発され利用されている。
関連製品
「MCZ法」に関連する製品が存在しません。キーワード検索
フリーワードやカテゴリーを指定して検索できます
関連用語
関連特集
会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。