半導体用語集

CZ法

英語表記:Czochralski method

 この方法は種子結晶およびるつぼを回転することを特徴とする引き上げ法の一種であり、1918年金属結晶に対して初めて用いたCzochralskiの名にちなんでCZ法とよばれている。CZ法は回転引き上げ法とも呼ばれるが、現在ではほとんどの引き上げ法が回転をしているので単に引き上げ法とも呼ばれる。また、LEC法やMCZ法などCZ法から派生した方法の総称としても用いられている。
 単純なCZ法の原理図を図1に示す。回転軸上の台座に設置されたるつぼに収容された原料はるつぼを囲むヒータによって加熱融解される。この時の融液近傍の温度分布は引き上げ法と同様に融液表面中心部を融点近傍温度として、上方ほど低く、外周ほど高くなっている。この融液表面へ上方から種子結晶を回転しながら接触した後、種子結晶を上方(低温部)へ回転しながら引き上げることにより結晶を成長させる。このようにCZ法では、るつぼ内部で成長させるプリッジマン法などとは異なり、結晶成長がるつぼ壁との接触なしに自由空間で行われ、また、単純な引き上げ法とは異なり融液、結晶両者の回転により成長界面近傍の温度分布の回転対称性が向上する。このため、るつぼによる機械的応力を受けないので大型・高品質で、かつ丸棒状の結品を得やすいという特徴があり、電子工業用材料として用いられるバルク結晶の多く、たとえば半導体結晶としてはシリコン、GaAs、GaP、InP、酸化物結晶ではサファイア、レーザ用イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、金属結晶ではAl、Cu、この他光学用弗化物結晶などがこの方法およびLEC法、MCZ法により成長されている。

(1)形状
 融液からの成長における成長速度 (f) は、固化により発生する潜熱 (L) が融液および結晶中に熱伝導によって散逸する速度に依存する。この時の熱収支は次式で与えられる。
  ksGs-klGl=fLds
ここで、kは熱伝導度、Gは温度勾配、dは密度である。
 また、結晶は常に引き上げられているので表面張力により融液も引き上げられる。この時、半径aの結晶につり上げられた半径a、高さhの円柱状融液(メニスカス)に働く重力πa²がhdlgと表面張力2πaγとがつり合っているので、a=2γ/hdlgと表わされる。また、メニスカス内の温度勾配は融液温度 (T) と融点 (Tm) を用いて、Gl=(T-Tm)/hと近似できるので、最終的に半径aは次式で与えられる。
  a=2γ(ksGs-fLds)/kldlg(T-Tm)
この式から、結晶の大きさは融液温度、成長速度、結晶の温度勾配によって変化し、径を太くするにはT、fを小さくするかGsを大きくすればよいことがわかる。一定径を維持するためにはこれらを一定に保てばよいが一般に成長とともにGsが減少してしまうので、半径aを監視し、所定の半径から変化(減少)した場合にはTとfを小さくしなければならない。半径の監視法としてはCZ法ではメニスカス周囲が融液に接するところに発生する明るい環状の領域(フュッションリング)を光学的に検知するが、この方法が使用できないLEC法では重量変化により検知している。
 CZ法では太さ10~4mmの円柱あるいは四角柱状の種子結晶を融液と十分なじませたのち、徐々に所定の大きさまで大きくした肩部を形成し、定径部、尾部(徐々に細め、切り離しによる熱衝撃を滅少するため)を作成するのが一般的手順である。このような大まかな(長時間の)形状の制御は融液温度調整で行い、定径部成長中の融液温度変動などによって生じる(短時間の)形状変化は引き上げ速度で(自動)調整することが多い。また、シリコン結晶のように無転位結晶が要求される場合には、種つけ後にネッキングという操作を行う。ネッキングは種つけ後引き上げ速度を速くして径を細める(直径1~2mm、長さ2~10cm)    ことをいい、これにより種子結晶から継承したり、種つけ時に発生した転位を消滅させることができる。転位の消滅機構については成長速度を速めることにより空孔点欠陥が増加し、転位の伝播を阻害するという説があるがまだ十分明らかにはなっていない。現在、シリコン結晶は直径6~8インチ、長さ1~2mのものが成長されており、このネッキング部の耐荷重性が問題になってきている。
(2)品質
 CZ法は一方向凝固成長法であるので成長方向に溶質(不純物)分布が発生する。一定分布にする方策として連続チャージ法や二重るつぼ法があるが、これらは装置や制御が複雑になるので工業的には長尺の結晶が作られている(「引き上げ法」の項参照)。結晶中の代表的欠陥である転位の密度が増加するとこれらが寄り集まって小傾角境界、大傾角境界へと成長し、最後には多結晶になってしまう。転位は応力により移動・増殖する性質がある。 CZ法はるつぼとの接触による機械的低転位密度結晶が成長できる成長法であるが、成長に必要な温度勾配による熱応力があるので転位が増殖する。低転位にするためには低温度勾配が望ましいが、成長速度が遅くなりまた径の制御も難しくなる。



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株式会社同人産業

同人産業では主にCZ法とFZ法を採用し、単結晶シリコンの成長からスライス、エッチング、研削・研磨、精密加工まで一貫して行っております。

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