半導体用語集
SIMOX
英語表記:separartion by implanted oxygen
Si基板に酸素をイオン注入後、高温で熱処理し、Si基板内部に埋め込み酸化膜層を形成するSOIの形成法であり、1978年にNTTから提案された。 酸素ドーズ量が~1×1015 cm-2 では非晶質Si層が形成されるだけであるがドーズ量の増加に伴い酸素濃度のピ ーク位置(Rp)を中心に Si酸化膜が形成される。連続した埋め込み酸化膜を形成するには~1×1018 cm-2以上のドーズ量が必要で、100mA レベルの 大電流のイオン注入装置が1980年代に開発された。SIMOXでは酸素イオン注入後の熱 処理によりイオン注入された酸素と基 板 Siを反応させ埋め込み酸化膜層を 形成するが,この熱処理の温度が低い と完全な酸化膜が形成されない。熱処 理温度は1,300°C以上が必要とされ、 専用の熱処理炉が使われる。高温熱処 理では温度不均一性に起因する熱スト レスによるスリップの発生が懸念され るが、温度の均一化と基板の支持方法 の改善により実用的には解決されてい る。現在では200mmのSIMOX ウ ェハが市販され、300mmゅの開発も 進められている。薄膜 Si層の厚さは主に加速電圧に より決まり,通常用いられる 100-200 keV Clt 100-200 nm * 用的な範囲である。イオン注入時にはSi基板にダメージが導入され、イオ ン注入後の熱処理による回復過程で貫 通転位が薄膜 Si層に導入される。ダ メージの影響を低減するには、イオン 注入時に基板を400~600°Cに昇温す ることが有効である。薄膜Si層中の 貫通転位密度はドーズ量に依存し、低ドーズほど転位密度は低下し、1×103 cm2以下にするにはドーズ量を1× 108cm-2 以下にすることが必要と報 告されている。 「イオン注入された酸素は熱処理によ り基板 Si と反応してSiO2になるが、 埋め込み酸化膜層の性質は酸素イオン のドーズ量によって変化する。厚さは ドーズ量が多いほど厚くなるが,薄膜 Si層の貫通転位は増加する。また, 埋め込み酸化膜層中にSiO2に反応しきれない Si が残りSiアイランドが形成される。Si アイランド低減にはド ーズ量減少が有効との報告がある。こ のように酸素ドーズ量の適正化が SIMOXではポイントである。貫通転位を大幅に減らすにはドーズ量を1× 1018cm-2以下にする必要があったが、 連続した埋め込み酸化膜は困難と考えられていた。しかし、4.0±0.5×1017 cm-2 のドーズ量範囲 (ドーズウィンドウ)では連続した埋め込み酸化膜の形成が可能なことから貫通転位の大幅な低減が可能になり、1×103cm-3以下の転位密度が可能になった。また、 酸素イオン注入時、基板表面にダストがあるとこの部分だけ酸素イオンが注入されないため、酸化膜が形成されない微小領域が残り、埋め込み酸化膜のピンホールとなる。ピンホールは低ド ーズほど増加するが、埋め込み酸化膜をさらに酸化するITOX法により低 減が可能である。現在ではドーズウィンドウとITOX法を組み合わせることにより、貫通転位は1×103cm-2以 下に、ピンホールは1.0個/cm2 まで低減されている。薄膜Si層、埋め込み酸化膜界面は平坦性(マイクロラフネス)が熱酸化を利用する貼り合わせ SOI にくらべ 劣り、界面準位の点でも懸念されている。しかし、薄膜 Si層の厚さおよび 均一性はイオンの加速電圧、ドーズ量分布で厳密に制御できるため、他のどの方法よりも優れており、完全空乏型のMOS LSI など高い膜厚均一性が 要求されるデバイスにはSIMOXは有力な方法である。SIMOXの薄膜Si層中には貫通転位以外の結品欠陥が薄膜 Si層と埋め込み酸化膜界面付近に存在するとの報 告もある。また、SIMOXでは薄膜Si層厚は注入イオンのエネルギーとドー ズ量に依存するため、0.2km以上の厚い薄膜 Si層の形成は困難である。
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