半導体用語集
めっき
英語表記:plating
「めっき」の歴史は、メソポタミアの時代、中国では前漢の時代にまでさかのぼることができる。わが国の最古のめっきは、飛鳥寺大仏の「アマルガム金めっき」といわれており、古くは「滅金」と書かれたらしい。漢字では「鍍金」と書き、純粋な日本語である。当用漢字がないので「めっき」とひらがなで書くべきだといわれているので、「メッキ」とカタカナで書くと違和感を持たれる場合があるが、工学系では「メッキ」とカタカナも利用されているのが実状である。電気めっきは「電鍍」ともいわれる。
「めっき」の定義は、「物体上に金属をつける」ことである。したがって、本稿で記載したスパッタ法、CVD法による金属薄膜堆積はすべて「めっき」の一つであることになる。めっき技術の立場から分類すると、湿式めっき、乾式めっき、化学気相めっき、溶融メッキがある。したがって、乾式めっきに真空蒸着、スパッタ法、イオンプレーティングがあることになる。化学気相めっきとは、CVD法のことである。溶融めっきとは、溶けた金属中に被堆積物を入れ引き上げる方法で、トタン(亜鉛)やブリキ(スズ)に利用されている。
めっき技術は電子工業の分野ではプリント基板やコネクタに利用されているが、LSIウェハプロセスでは、配線金属Cuの堆積技術の一つとしてにわかに注目をあびている。めっき技術の中では、湿式めっきに分類される技術である。
湿式めっきには、「電気めっき法」と「無電解めっき(または化学めっき)法」がある。電気めっき法は、一般にめっきといった場合にイメージされるめっき法で、堆積させたい金属の溶けた水溶液に陽極と陰極を挿入し、直流電流を流し、一般には陰極上の基板に金属を堆積させる方法である。陽極には、堆積金属と同じ金属を利用するのが一般的であるが、白金やチタンを利用することもある。無電解めっきは、溶液中の金属イオンを還元剤の働きで、電流を流すことなく、金属を堆積させる方法である。プリント基板に利用されるニッケルめっきは無電解めっき法で堆積されるのが一般的である。
LSIウェハプロセスで検討されているCuメッキには、電気めっきと無電解めっきの両方が検討されているが、1999年時点では電気めっきの方が主流になりつつある。堆積のイメージとしては、電気めっきがブランケットCVD、無電解めっきが選択CVDに近い堆積といわれている。LSIの微細孔埋め込み技術としてとらえた時、アスペクト比の大きな微細孔へも十分埋め込むことができる特徴がある。
LSIウェハプロセスで利用されているCuめっき(電気めっき)では、硫酸銅と希硫酸からなる電解液中にCu電極(陽極)とウェハ(陰極)を入れ、通電する。 Cu²⁺ + 2e → Cu↓の反応でCuが堆積する。この時の標準電極電位は、0.34eVである。通電する必要がある、膜厚制御には電流制御が必須である。ウェハ表面上に均ーに電流を流すために、電解液の導電性を高める、液の撹拌対流を促進するなどの方策が取られる。実際のプロセスでは、有機物や塩化物からなる添加物を加え、この添加物はウェハ形状に応じた場所に選択的に吸着し、膜厚均一性、埋め込み特性上、平坦性、結晶グレインの制御を行っている。有機硫黄化合物を含む有機塩からなるブライトナー(めっき増殖触媒)は、Cu表面に吸着し電荷移動を促進して、堆積速度を向上させる。また、ポリエチレングリコールなどの有機物であるキャリアと呼ばれる添加物は、ウェハ表面に吸着するが、微細孔には入らないことを利用して、平坦部の堆積速度を抑制する。スルホン酸からなるレベラと呼ばれる添加物は、突起部分やエッジ部分での堆積を抑制するといわれている。通電方法もパルスにするなど、堆積特性を変化させる要因である。原理はいたって簡単であり、優れた埋め込み特性を有しているが、ノウハウ的要素が大きいという欠点があり、現場のプロセス技術者泣かせといわれるゆえんである。
電解めっきでは、ウェハ上に均ーに電流を流す必要があることから、高抵抗のTaやTaNのバリアを形成しただけではCuの均ーな堆積が起こらないため、どうしてもCu薄膜(wetting layer)をあらかじめ堆積させておく必要がある。Cu薄膜堆積には、スパッタ法やCVD法が利用される。スパッタ法よりCVD法の方が埋め込み特性に優れるといわれている。コンタクト孔やビア孔が微細化すれば、あえてめっき法でCuを堆積せずともCVD法で埋め込んでしまえばよいという議論もあり、今後のプロセスインテグレーションの課題である。
めっき法では、電解液を利用するため環境対策などを含めた検討が必要である。
なお、LSIに利用される配線金属の歴史としては、純Alから、Al-Si系、Al-Cu系と変遷してきた。特殊な例ではAu配線が利用されているが、多くの場合はAl系であった。Cuが注目されているのは、Alより抵抗率が低く、配線のRC遅延改善に寄与できること、また融点が高いことからエレクトロマイグレーション耐性に優れるのではないかという期待からである。Cu配線を実現するためには、CuがSiO₂中を拡散してMOSFETの特性を劣化させるという問題の解決、さらにはRC遅延改善のために導入が必須といわれている低誘電率薄膜の材料との整合性など、プロセスインテグレーションを含めたトータルな開発が必要である。
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