半導体用語集
イオンビームスパッタリング
英語表記:ion beam sputtering
イオンビームが固体に入射する時、固体構成電子との衝突により、その運動エネルギーを失っていくとともに(電子阻止能)。構成原子とのラザフォード散乱により進行方向を大きく変えられ、その運動エネルギーを衝突原子に付与する(核阻止能)。原子に与えられたエネルギーが結合エネルギー(一般に10~20eV)より大きい時、原子は初期の位置から弾き出される。これを一次ノックオン原子と呼び、一次ノックオン原子はさらに構成原子と衝突し、弾き出される原子の数を増やすことになる。このような連鎖的な衝突現象を衝突カスケードと呼び、入射イオンの軌跡の周辺に、多くの運動エネルギーを持つ原子が作り出され、それらの一部は表面から離脱する。このような現象をイオンビームスパッタリングと呼んでいる。また、化学的に活性なイオンビームの照射あるいは活性ガス雰囲気中では、化学反応が試料原子の脱離に寄与することになるため、この場合を化学スパッタリングと呼称し、前者を物理的スパッタリングと分けて呼ぶ。入射イオン1個当たりの表面から飛び出す原子数をスパッタ収率と呼び、イオンの種類、運動エネルギーイオンビームの表面への入射角、試料物質で変化するが、多くの場合1~10原子/イオン程度の値を持つ。スパッタ収率は、イオンの核阻止能に比例し、基板原子の昇華エネルギーに反比例することが理論的、実験的にも確認されており、理論計算値は、かなりの精度で実験結果を再現できる。イオンビームスパッタリングを利用したエッチング工程では、まず基板上にマスクとなるパターンを形成し、マスク材料と基板材料のスパッタ収率の差を利用してマスクパターンを基板材料に転写する。最終的にえられる断面形状は、スパッタ収率の差や、収率のビーム入射角依存により決定され、理論的にも予測可能である。ただし、スパッタされた原子が再度基板に堆積する再付着効果が顕著な場合もあるので注意を要する。また、基板構成原子が2種以上の元素から構成されている場合のスパッタエッチングにおいては、表面の濃度がスパッタエッチ後にバルクとずれてくるという選択スパッタ現象が起こる。これは各元素のスパッタ収率の違いが、固体内部から表面への拡散現象と平衡状態になることで説明されている。
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