半導体用語集

インクマーク

英語表記:ink marking

 インクをパッケージ表面に転写することにより刻印するマーク方法。良好な視認性をえることができる長所の反面,乾燥・硬化させる工程が必要であり,インクのライフや粘度の管理を必要とする不便さがある。また,光沢のある素材に対しては,概してインクの密着性が悪いため,注意が必要である。また,最近導入されつつあるロットトレースコードの付与は,意匠ごとに機械的な版を必要とするインクマークは適していない。そのため半導体製品へのマーク方法は,レーザマークに主役の座を譲りつつある。
 半導体のマークに用いられるインクは,信頼性の点からエポキシ樹脂などの硬化する樹脂を主成分としている。硬化は,溶剤の揮発と,樹脂自体の化学反応(重合)により進行するが,その条件により熱硬化,UV硬化,常温硬化の3タイプに分けられる。熱硬化インクは,150℃で1時間程度の加熱により硬化させるもので,最も高い密着性がえられる。UV硬化インクは,加熱状態でUV(紫外線)を数秒照射することにより硬化反応が起き,それがUV照射後も維持されるもので,熱硬化タイプに次いで高い密着性がえられる。インクの色はプラスチックパッケージ(黒)に対しては白または銀,セラミック(茶褐色)には白,金属(SUS材,金めっき,ニッケルめっき)に対しては黒がよく用いられる。
 インクマークにおいて最も注意しなければならないことは,パッケージ表面との密着性である。プラスチックパッケージの封止に用いられるモールド樹脂には,モールド工程における離型性を確保するため,ワックスが混ぜられている。ワックスが樹脂表面に滲み出てインクと樹脂の密着性を著しく阻害するため,マーク前にワックスを除去する必要がある。除去する方法は水素ガスや酸素ガスを燃焼し,その炎でパッケージ表面を瞬間的に焼くバーニングという方法や,有機溶剤を含浸させた布でパッケージ表面を拭き取る方法が用いられる。また,パッケージ表面の粗さの点からいえば,粗いほどインクの密着性が高くなる。多くのプラ
スチックパッケージで表面を梨地にしているのは,インクマークの密着性を確保するためでもある。
 インクマークの方式は,凸版を用いた凸版印刷と,凹版を用いたものがある。凹版を用いたものは,柔らかいゴムのパッドを介してインクを転写するため,パッド印刷と呼ばれる。凸版印刷ではインクのムラを減らすように工夫された複雑なローラ機構のマークへッドが用いられているが,それでも凸版の側面にインクが回り込むため,印字のニジミやムラを完全になくすことは困難であり,高品位なマークには向かない。
 パッド印刷は,凹版上のインクを一度スキージでスキージングしてゴムパッドに転写するため,印字のニジミやムラが少なく印字品質が高い。しかし,その一方でパッド印刷は,毎回のスキージングと定期的なパッドクリーニングを必要とするため生産能力が低く,またゴムパッドが消耗品であるためランニングコストが高くなる欠点がある。どちらを用いるかは,要求される印字品質と生産能力を考慮して決定する必要がある。
 インクマークでの評価項目は密着性(ピール試験)と溶剤試験がある。溶剤試験は,実装後のフラックス洗浄を考慮したもので,同じタイプの有機溶剤を使用する。また,外観検査の不良項目としては,かすれ,つぶれ,欠け,ムラ,位置ずれなどがある。


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