半導体用語集

レーザマーク

英語表記:laser marking

 レーザにより,パッケージ表面を焼いて刻印する方法。インクマークに比較して視認性は劣るものの,生産性に優れておりランニングコストが安い。また,パッケージ表面を直接加工するため,簡単には消えない信頼性の高い刻印をえることができる。また,版を必要としないプログラマブル方式のものは,ロットトレースコードの付与に適している。
 レーザマークで描いた文字の視認性がえられる原理は,材料の種類により異なっている。プラスチックにマークする場合,白いプラスチックに対しては炭化により黒く発色させる方法が,また,黒いプラスチックに対しては発泡により白く発色させる方法が用いられる。しかし,樹脂の種類により発色性はまったく異なるため,一概に同じ手法が使えるとはいえない。半導体に用いられるモールド樹脂の場合は,少し彫ることにより,視認性のよい刻印がえられることが多い。これは樹脂中には充填材としてシリカ(SiO₂)が入っているが,このシリカの表面を露出することにより,外光を反射する面が形成され,非マーク部とのコントラストがえられるためではないかと推測される。なお,モールド樹脂の表面状態としては,粗さが少ない面(鏡面)の方が視認性がよく,梨地が適しているインクマークとは逆の傾向にある。セラミックにマークする場合は,暗褐色の地に対しレーザ照射部が白色に発色するため,表面粗さによらず視認性のよい刻印がえられる。金属にマークする場合は,レーザでドット状に彫り,元の素地より荒らして視認性をえる方法と,逆にレーザで表面を溶融して,元の素地よりも平滑にすることにより視認性をえる方法の2種類があり,素材の粗さとめっき厚さによって方法を使い分けている。
 レーザマークに用いるレーザとしては,CO₂レーザ,YAGレーザが広く用いられている。CO₂レーザは,発振材料にCO₂を使った気体レーザであり,波長は10.6µmである。ガラスなどの透明部品やセラミックヘのマーキングに適している。一方,YAGレーザはNd(ネオジム)をドープしたYAG結晶(Yttrium Aluminum Garnet)を発振材料に使った固体レーザであり,波長は1.06µmである。樹脂や金属へのマーキングに適している。YAGレーザは,Qスイッチにより,レーザ条件を様々に振れる長所を持っており,適用範囲が広い。Qスイッチは,ある種の素子の電気や超音波による屈折率変動を利用した高周波(1,000~50,000Hz)の光スイッチング素子である。通常の10Hz程度のパルスで発振したレーザに比較して,Qスイッチで発振されたレーザは高いピークパワーを有する。このピークパワーの高いレーザを用いることにより,モールド樹脂においてススの発生を抑える条件設定が可能になる。またYAGレーザ光は,光ファイバを用いて数10m離れた箇所に伝送できるため,光源と加工点を分離することや,一つのレーザ光源を数ヵ所の加工点に分岐して使用できるという長所もある。マークする部分のパッケージ材料や要求される品質,また装置の設置条件に応じてレーザ光源を適切に選ぶことが大事である。
 レーザマークでの評価項目は,視認性(目視,画像検査),線幅(顕微鏡測定),彫り深さ(表面粗さ計)やススの発生量チェックなどがあげられる。近年はパッケージの薄型化が進んでいるため,マークの彫り深さの管理は特に重要といえる。


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